浅野裁判に異議あり!
しかし、ますみんは無罪である*2。
1.差し入れ持ち帰り事件
罪名 窃盗
被告人は、東京都港区浜松町1丁目31番地所在の文化放送メディアプラスにおいて、ラジオ番組アニスパ関係者の共有に係るチョコレート等の差し入れを窃取したものである*3。
*4窃盗罪(刑法235条)とは、他人の占有する他人の物を窃取した、すなわち被害者の意に反して、自己*5に占有を移転した場合に成立する犯罪である。そこで、問題は被告人浅野の行為が、被害者*6の意に反しているか、そしてこのことを浅野が認識・認容しているか(故意の有無)である。
そもそも、差し入れは、「アニスパ番組関係者」用のものであるから、アニスパ関係者である浅野が「食べる」「消費する」こと自体は何も問題がない。問題は、「ごっそり持っていく」、特に「他の現場の差し入れのために持っていく」点である。
ここで、ポイントとなるのはアニスパのパーソナリティーが浅野と鷲崎だけ*7という点である。特に前番組が「浅野真澄・鷲崎健のスパラジ!*8」と、浅野らの冠番組になっているところは注目に値する。差し入れ者の意思としては、「関係者のみなさんへ」と言っても、その象徴たる浅野・鷲崎が主に考えられて差し入れられていると解するのが相当であり、一般のスタッフが大量に持っていった場合と、浅野が持っていった場合は区別するべきであろう。そこで、浅野の場合、被害者の推定的承諾の及ぶ範囲*9は相当広いと解すべきである*10。
これを前提に、構成要件該当性*11を考えると、余り他のスタッフは差し入れを食べていなかったようで、「残り物の差し入れを持って帰った」だけなのだから、①実害はほとんどない。また、換金目的等ではなく、「残り物の差し入れの有効活用」が目的であるから、②目的の不当性もそこまで大きいものではないそして、かなりの期間、③持ち帰りを黙認されていたことを考えれば、被害者の意に反したと認めるのは困難である。むしろ、「しょうがない奴だな」と苦笑されながらも、許容されていたものと解すべきである*12。
また、仮に結果的に被害者の意思に反していたとしても、窃盗犯は故意犯であるから、窃盗をすること、つまり「被害者の意思に反して財物の占有を取得すること」を認識・認容していなければならない。しかも疑わしきは被告人の利益にの原則からは、この認識があったことを「合理的疑いを超える」程度に証明しなければならない。
この点、浅野は前記①〜③の事情を認識した上で、自分の行為が「被害者の意思に反しない、窃盗にあたらない行為だ」と考えて持っていっている。仮に結果的には被害者の意思に反していたとしても、そのことは浅野の人間性に疑問を投げかけこそすれ、「窃取の認識認容」があったとまでは認められない。そこで、被告人浅野は無罪と言うべきである*13。
2.ホントは細かいのがあるんじゃないのか事件
罪名 詐欺
被告人は、平成19年2月ころ、東京都港区浜松町1丁目31番地所在の文化放送メディアプラスにおいて、柴崎健に対し、立て替え金返済の意思も能力もないのにあるように装って、「ゴメン、今細かいのが300円しかない」と申し向けて、同人をして立て替え金の返済を受けられるものと誤信させ、よって、そのころ、同人をしてピザ配達員に被告人の分のピザ代金を立て替えさせ、もって、ピザ代金相当額の財産上不法の利益を得たものである。
詐欺罪(246条)は、人を欺いて財物ないし、不法の利益を得る犯罪である。
本件においては、鷲崎にピザ代金を立て替えさせ、その立替代金相当分が浅野の「利益」になっている(いわゆる二項詐欺)。ところが、詐欺罪は、騙す時点*14で騙す意図*15がなければならない。例えば、「ちょっと1000円貸してといってお金を借りたが、その後はなんだかんだ言って返してくれない」という寸借詐欺の事例では、貸してといって頼んだ時点で、踏み倒すつもりであったことが立証されないかぎり無罪*16なのである。そこで、鷲崎に立替を頼んだ時点において、踏み倒す意思があったかを考える。
すると、浅野に不利な事情として①1ヶ月以上返していない、②元々お金には執着がある方*17等の事情があるが、これだけでは十分な状況証拠ではなく、被告人が否認している状態では、到底故意は認められない。そこで、無罪。
3.ミッフィーちゃんお皿事件
罪名 強要
被告人は、東京都港区浜松町1丁目31番地所在の文化放送メディアプラスにおいて、アニスパ新人アシスタントディレクターに対し、「文化放送のゴミ箱の中からミッフィーの皿と交換できるポイントを集めて頂戴」と語気荒く申し向け、同人をして文化放送内のゴミ箱をあさってポイントを探させ、もって、義務なきことを行わせたものである。
強要罪(223条)は、人に義務なきことを行わせ(例:土下座をさせる)、又は権利の行使を妨害(例:訴訟をおこさせない)した場合に成立する犯罪であるが、単に義務なきことをさせただけではだめである。「生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用い」なければならない。すると、本件はお願いをする口調で、単に「ポイントを集めて頂戴」といっただけであり、暴行・脅迫は到底認められず、これもまた無罪である。
4.「大奥」DVD事件
被告人は、アニスパスタッフが「大奥」DVDをプレゼントした際、「このDVD、ファンからもう貰っている。レシートあるなら、他のと交換してきて欲しい。三谷作品が良いな」と言い、スタッフに返品をさせたものである。
本件行為は「道徳的」には大変悪いことである。しかし、刑法には罪刑法定主義というのがあり、どれだけ悪いことでも「法律でこれをしてはいけないと定められない限り、罰せられない」という原則があるのである*18。そして、刑法には、このような行為を罰する規定が存在しない。仮にスタッフがショックでPTSDになったというのであれば、傷害罪(204条)になるが、そういうわけでもないし、前記強要の要件である暴行脅迫もないのである。そこで、被告人の前記行為には何ら罪となるべき事実が含まれていないので、無罪以前に刑事訴訟法339条2項*19で公訴棄却の決定、すなわち門前払いをしなければならないのである。
まとめ
アニスパの番組内では陪審員が、ますみんを有罪にしていた。しかし、ますみんは無罪である。
平成21年から、裁判員制度が始まる。公益の代表者たる検事であっても、http://shadow9.blog54.fc2.com/blog-entry-608.html、鹿児島での血も凍る冤罪、無罪判決!: 不条理日記といった、無実の人を起訴することがある。
そんな時、裁判員が暴走し、無辜を処罰してしまうのではないか。
浅野裁判は、裁判員制度の危うさに警鐘を鳴らしている。
補足:本エントリは「ますみんが刑法上の責任を負うか」「刑法上の犯罪を行ったと証明できるか」という点に焦点をあてています。道徳的な問題やますみんの人間性の問題には触れておりませんので、なにとぞご了承下さい。
*1:オタサガ~悲しくも頼もしきオタクのSaga(性)~参照
*2:別に、私がますみんが好きで贔屓していると言うわけではない
*3:公訴事実部分は、3/13に大幅に手直ししました。
*4:本項の内容につき、3/16に大幅に改編した。「構成要件該当性否定」→「故意否定」だが、理屈はほぼ同じである。
*6:この場合は、ディレクターとかになるんですかね?
*7:艦長は今は考えない。
*8:コメントしてくださったヌルイ様ありがとうござます。訂正しました。
*9:まあ、しょうがないだろうと思う範囲
*10:この意味で、浅野の「スポンサーからの差し入れは、私とタケちゃん(鷲崎)に持ってきたようなもの」という弁解は正当である。
*11:ないし違法性
*12:そこで、構成要件該当性がない、ないしは違法性が欠ける
*13:これが一番グレーの色が濃い。それでもまだ「合理的疑いを超える証明」はないだろう。
*14:欺罔行為
*15:故意
*16:刑事的には
*18:これによって、予測可能性を確保
*19:第339条 左の場合には、決定で公訴を棄却しなければならない。2.起訴状に記載された事実が真実であつても、何らの罪となるべき事実を包含していないとき。