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トラストというゲームメーカーから出ている18禁ゲームに「オレの奴隷〜氷川雫」というものがある。内容を要約しよう。
有力者の後継ぎとして生まれ、たいていのモノは手に入れてきた主人公。ところが、氷川雫という少女だけは主人公に興味を示さず、誘いにも乗ってこない。主人公の雫への興味は執着へと変わり、何としても雫を自分のモノにしようとしたが、雫はかたくなに拒み続ける。そして、初めて知った『手に入らないモノ』を前に、主人公は暴走を始める。主人公は雫をレイプした後、自宅に監禁し延々と調教する...。
ttp://www.pix-trust.com/product/sizuku/index.html参照
*18禁ですので、18歳未満の方はアクセスしないで下さい。
このような「振られる」→「レイプ」→「同居生活*1」というパターンは、鬼畜ゲーのパターンとして、「よくある」ものと言えるだろう。
著名な判例雑誌である判例時報190号21頁には、鹿児島地判昭和34年6月19日という判決が紹介されている。
本件は鹿児島のある地方の青年が婦女に結婚を申し込んで拒絶され、これを承諾させるためその婦女を連れ出し強いて姦淫したという事案である。
判例時報190号p21
こんな、「振られる」→「強姦」→「結婚」というエロゲのような計画を実行に移した青年は、結局、婚姻を承諾してもらえず、強姦魔(強姦致傷*2)として逮捕された。
被告人に惚れられたばかりにひどいめにあった被害者がかわいそうではあるが、ここまでの事案の存在ならば、まだ想像できなくもない。しかし、その後の展開がすごい。
弁護人が無罪を主張したのである。
なぜ、無罪か。
弁護人は、この地方には婚姻に同意しない婦女を承諾させるためその婦女を強いて姦淫する「おっとい嫁じょ」と呼ばれる慣習があり、被告人はこの慣習に従って本件行為に出たもので、違法性の認識を欠き故意がないと主張したのである。
裁判所は当然のようにこの驚愕すべき主張を退けた。
少なくとも本件の如き自然犯にあっては違法性の認識は故意の成立要件ではないと解せられるのみならず被告人の当公判廷における供述同じく検察官に対する供述調書によれば、被告人が右の如き慣習が反社会性を帯びるものであることの認識を有していたことが明らかであるから被告人は違法性の認識を有していたものと認むべきであり、弁護人の右主張は採用しがたい
判例時報190号p22
と判示して、被告人を有罪とし、結局この青年は、懲役3年の実刑を受けることになった。
まとめ
事実は小説よりも奇なりと言うが、判例を探すと「それなんてエロゲ?」な事例がかなり出てくる。
しかし、本件についてよく考えてみると、強姦致傷といっても、傷害結果は処女膜破裂という限りなく単純強姦に近い事案であり、被告人に累犯前科がない*3ことから、相当額を払って謝罪・示談をし、被害者に許してもらうことで、執行猶予もありえないわけではない*4事案であり*5、弁護人がアホな無罪主張をしたせいで実刑が決まったという弁護過誤の事案とも言えるだろう。
参考:http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/950254.html(三軒茶屋 別館様より)
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追記:当サイトは4月3日に30万アクセスとなりました。どうもありがとうございました。
参考:判決全文
判決
本籍 鹿児島県肝属郡(以下略)
住居 略
農業 甲野太郎
昭和12年5月27日生
右被告人に対する強姦致傷被告事件につき、当裁判所は検察官某出席のうえ審理を遂げ、左のとおり判決する。
主文
被告人を懲役3年に処する。
未決勾留日数中30日を右本刑に算入する。
訴訟費用は全部被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、昭和34年1月15日頃、その義兄である丙から早く婚姻するように勧められたので、被告人もその気になって丙に年頃の娘の紹介を依頼したところ、丙の計らいで同月19日鹿児島県肝属郡(以下略)乙野次郎方において、同人の長女A子(当20年)と会う機会を得たが、被告人は忽ち同女に思いを寄せるに居たり、その場で同女に婚姻の申し込みをなしその後二回にわたって同じ申込みを繰り返したが、同月30日には同女の兄B男を通じて右申込を拒絶された。然し、被告人はどうしても同女との婚姻を断念できないので、同女を強いて姦淫したうえ同女をして止むなく婚姻に同意させようと考え、同年2月5日丙方において丙、ならびに丁こと戊と相談の末、翌6日同女が鹿屋市所在鹿屋職業安定所に行くのでその帰途を3名で待ち伏せて無理にでもハイヤーに乗せてどこかへ連れて行き、更に婚姻の同意を求め、それでも応じないときは夜になってどこか知人の家に連行し、被告人において同女を強いて姦淫することに計画を決め、翌6日午後0時過ぎ頃、被告人等3名は前記安定所付近において同女を待伏せ、同女を付近の食堂に連れ込んだうえ、再び婚姻に同意するよう説得したが、同女に拒絶されたので、ここに、被告人等3名は前記計画を実行に移すべく意思を通じ、同日午後3時頃同市×先路上において被告人は前方より同女の手を引き、丙、戊等は後方より同女を押す等して同女を無理に前もって被告人が誘導して来ていたタクシーに乗せた上囎唹郡×町方面に連行し、同町所在の食堂において時間をつぶした後、同女をその自宅につれて帰ると欺いて再び同女をタクシーに乗せ、途中下車させてくれと懇願するにもかかわらず、タクシーの戸を押さえて脱出を不能ならしめたうえ同日午後6時過ぎ頃、同女を肝属郡×町×番地己方に連れ込み同日午後10時頃、被告人は前記連行により極度に畏怖している右A子を同所四畳半の間において仰向けに押倒し右手で同女の両手を同女の頭の上方に押えつけ、足で同女の股を蹴る等の暴行を加えて完全に同女の反抗を抑圧したうえ二回にわたり強いて同女を姦淫したがその際同女に対し治療5日間を要する処女膜裂傷を負わせたものである。
(証拠の標目)
略
(法令の適用)
略
(弁護人の主張に対する判断)
弁護人は「被告人の住居地である×町地方には婚姻に同意しない婦女を承諾させるためその婦女を強いて姦淫する「おっとい嫁じょ」と呼ばれる慣習があり、右姦淫行為は一般に適法視されている。被告人も右慣習の存在により本件姦淫行為を適法行為と確信し、その違法性の認識を欠いていたから本件行為はその故意を欠くものである。」旨主張するが、少なくとも本件の如き自然犯にあっては違法性の認識は故意の成立要件ではないと解せられるのみならず被告人の当公判廷における供述同じく検察官に対する供述調書によれば、被告人が右の如き慣習が反社会性を帯びるものであることの認識を有していたことが明らかであるから被告人は違法性の認識を有していたものと認むべきであり、弁護人の右主張は採用しがたい。
よって主文のとおり判決する。
昭和34年6月19日
鹿児島地方裁判所刑事第2部
裁判長裁判官 某
裁判官 某
裁判官 某