アホヲタ元法学部生の日常

アニメを見て法律を思い、法律を見てアニメを思う法アニクラスタ、ronnorのブログ。頻繁にツイッター(@ahowota)に出没しております。メールはronnor1あっとgmail.comへ。BLJにて「企業法務系ブロガー」として書評連載中。 #新人法務パーソンへ #オタク流勉強法 #明認方法 「アホヲタ元法学部生の日常」(ブログ)、「これからの契約の話をしよう」(同人誌)、『アニメキャラが行列を作る法律相談所』(総合科学出版)等。

会社法コンメンタールのコストパフォーマンス

会社法コンメンタール〈1〉総則・設立(1)

会社法コンメンタール〈1〉総則・設立(1)

1.会社法コンメンタール
コンメンタール。逐条注釈書とでも訳そうか。法律の条文毎に判例・文献を渉猟し、その解釈を徹底的に 説明する本だ。


会社法については、商法時代には、注釈会社法

新版 注釈会社法〈7〉新株の発行 (有斐閣コンメンタール)

新版 注釈会社法〈7〉新株の発行 (有斐閣コンメンタール)

があり、裁判所からも権威を持つものとして扱われていた。


新会社法に対応したコンメンタールとしては、まずは完結した基本コンメンタールシリーズが挙げられる。

新基本法コンメンタール会社法1 (別冊法学セミナー 基本法コンメンタール)

新基本法コンメンタール会社法1 (別冊法学セミナー 基本法コンメンタール)

完結しているのはありがたいし、3巻で約1万5000円と、お財布に優しい。
ただ、文献や判例の網羅度がやや低く、基本書よりは当然深いとはいえ、コンメンタールとしてみると記述はやや浅い。


次が逐条解説会社法

逐条解説会社法〈第1巻〉総則・設立―会社法の沿革・会社法の性格・第1条~第103条

逐条解説会社法〈第1巻〉総則・設立―会社法の沿革・会社法の性格・第1条~第103条

この一年くらい続刊が出ておらず、途中で刊行が止まった感があるが、各条項に単なる解釈論だけではなく、実務にどう影響するかといった解説がされている等、実務的な配慮があるのは優れている。


2.これぞ決定版! 会社法コンメンタール
 とはいえ、上記の2つを質量共に明らかに凌駕するのが、会社法コンメンタールである。


会社法コンメンタール〈1〉総則・設立(1)

会社法コンメンタール〈1〉総則・設立(1)


最大の特徴は、旧商法時代の解釈論の蓄積との接続である。
いわゆる立法担当者の解説、特に、条文の細かい文言の違いから「この論点は既に立法的に解決済みである」というような議論に違和感を覚える人にとっては、本書以上のものはない。
  江頭教授は、会社法コンメンタール第一巻の冒頭で、従来の商法下の議論の蓄積を元に、会社法に関する重厚な解釈論を展開する旨を明言されている。
この発想は、旧商法時代に法学部で会社法を教わり、未だに「266条の3」とか言ってしまう身としては、とても素晴らしい。


 私も、基本的には条文単位で必要に応じて参照しているだけである。もっとも、とある事情で、最近16巻を通読した。感想は「素晴らしい」の一言である。
16巻は社債という超マイナー分野だが、執筆者はみんな「現在の商法学会で社債を論じるならこの方」という方ばかりである。社債に関する本や論文をお書きになられたことがある中堅・ベテランの先生を配するのはもちろん、若手の先生にお願いする場合には、社債「通」の方を人選している。例えば、法学クラスタ「まどっち」森まどか先生は一つの好例であろう。「社債権者保護の法理」

社債権者保護の法理

社債権者保護の法理

で、大隅健一郎賞を受領されており、大小合わせて10くらい社債関連の論文をお書きになられている「社債法のライジング・スター」でいらっしゃる。


 もちろん、所々両論併記で終わっている(「説が分かれている」等*1)部分があるのは、実務家の卵としては、最低でも方向性を示すよう、改善をしていただきたいが、それ以外に特に内容面でコメントはない、素晴らしい本である*2


3.有斐閣商法、のような?
 ところで、昔Twitterで呟こうとして、140字を大幅に上回るので、お蔵入りにしたものとして、会社法コンメンタールコストパフォーマンス一覧がある。
以下、1頁あたりの値段が安い順に並べて見た。

会社法コンメンタールコストパフォーマンス一覧(税抜)
10巻585頁6500円(11円/頁)
16巻 603頁6500円(11円/頁)
8巻517頁6000円(12円/頁)
17頁447頁5500円(12円/頁)
18巻379頁5000円(13円/頁)
1巻381頁5000円(13円/頁)
12巻318頁4500円(14円/頁)
6巻361頁5000円(14円/頁)
4巻257頁4500円(17.5円/頁)


11巻241頁4500円(19円/頁)new!
21巻197頁4300円(22円/頁)new!


有斐閣商法!?  のような!?
参照:六法と曲芸商法 - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常

まとめ
会社法コンメンタールは、会社法注釈書の決定版であり、極めて学問的にも実務的にも価値が高い。会社や法律事務所等、「『会社法コンメンタール』というだけで100パーセント買う」顧客もさぞかし多いだろう。
 しかし、だからといって、わずか197頁のペラペラの本に4300円、税込4500円以上もの「強気の値付け」をするのは、正直いかがなものだろうかと思う。内容は素晴らしいのだから、値段についても、同様に相当なものとすることを強くお願いしたいものである。


後注:なお、「マイナー分野で売れないから妥当」とおっしゃるかもしれないが、「『会社法コンメンタール』というだけで自動的に買っている人」は相当いる。買ってみたらこの値段でこんな薄さだと、「とりあえず使いそうな部分だけ買って、後は必要に応じて」という購入者が増え、ますます売れなくなるのではないだろうか?

*1:もちろん、主要文献の頁数が示されているので、それを読んで考えるしかないのですが

*2:形式的な事を言えば、2009年くらいの刊行のものの江頭「株式会社法」の引用が「2版」で該当ページを探しにくいとかか。