アホヲタ元法学部生の日常

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環境ガール15 二人きりの試飲会その1〜平成20年第2問設問1

石の綿―マンガで読むアスベスト問題

石の綿―マンガで読むアスベスト問題

1.ローから研究者へ?
「新しい茶葉を買ってみたから、試飲に来ない?」ほむら先生に誘われて、研究室に遊びに行く。



「今日はかなめさんや、さくらさんはいないんですか。」と質問してみる。


「えっとね、あ、そうそう、今日の紅茶はキーマン、三大紅茶の一つだけど、ある程度紅茶を飲んでいないと、その良さはなかなか分かりにくいのよね。お茶請けには、月餅を買ってきたのよ。こういうナッツやドライフルーツを使ったお菓子にあうから、ちょっとシノワズリな感じのティータイムが味わえるのよ。」あれ、なんか話をそらされた気が…


「最近は、少しずつ環境法の勉強が進んで来たはずなんですが、勉強すればするほど、自分が分ってないと思うことが増えてしまいます。」



「それは当然のことよ。」お茶を入れていたほむら先生が、一瞬振り向く。


「私も、専門の行政法・環境法の勉強は、学部を含めればもう10年、専門的に研究を始めた法科大学院の研究論文からすれば5年以上ということになるけど、勉強を進めるにつれ、分からないことが増えていると感じるわ。」


「先生ですらそうなんですか。」


「私の場合、研究論文を書く過程で、学術論文をきちんと読むようになってから、最初はよく理解しないまま読んでいた教科書の行間にいろんな含意があることが、少しずつ分かって来て、自分が『分かっていない』ことがよく分かるようになってきたわ。逆に、それが、法律学の研究が面白くなったきっかけでもあるけど。」


「研究論文、ですか。」


「大学によって呼称はちがうけど、うちの大学だと、自主研究・論文作成という科目があって、法学の研究を体験することができるわ。その中で、自分に適性があって、このまま研究を続けたいということなら、博士課程に進学することも可能よ。法科大学院生は、無限の可能性に満ちているわ。研究者をやりながら実務と関わることもできるんだから、来年は環境法の論文を書いてみたらどうかしら。」


「論文を書くと、司法試験に影響しませんか。」


「もちろん、司法試験の勉強に割ける時間は短くなるわよね。でも、司法試験委員会が確認したいことって、基本的には、各科目についての基礎的な理解がきちんとできているか、そしてその基礎的理解を使って、その場で考えて、具体的にありそうな事案に対して何らかの解決を示せるかというだけ。まあ、環境法には、基礎的な理解というのに、法政策的な内容も含まれているという特徴がある訳だけどね。だから、きちんと基本を押さえて、それを具体的事案でどう使うかを、原告・被告・裁判所の三者の立場で考える訓練を積めば大丈夫よ。私も、受験が博士課程の一年目と重なって、あまり勉強する時間がなかったけど、なんとかなった訳だし。」


「先生は司法試験に合格されているのですね。」


「うふふ、修習は行ってないんだけどね。」こう言いながら、甘い香りがする紅茶のトレイを持ってソファーのところにやってきて、僕の隣に座るほむら先生。あれ、今までは向かい側の席に座っていた気が


「じゃあ、私が受けた年の環境法の問題でも、一緒に解いてみまましょうか。」いつになく近い距離で、ほむら先生がささやく。

A県内のB地区内に,石綿(アスベスト)を発生,飛散させる原因となる建築材料が大量に使用されている古いビル2棟(以下「ビル1」,「ビル2」という。)が隣接して存在していた。その所有者は,ビル1がC,ビル2がDであり,B地区住民であるEは,ビル1,ビル2と道路を面した向 かい側に住居を構えている。Cが平成19年4月からビル1の解体作業をしたところ,Eは,自宅の敷地内の大気中に,石綿が浮遊していることを確認した。
Eは,石綿吸入による健康被害の不安を感じていたところ,今度はDが同年6月からビル2を解 体する予定であることを聞き及んだ。Eは,近隣住民全体の健康に影響を及ぼすおそれがあると考えてB地区自治会に自治会として対策を講じるように申し入れた。これを受け,B地区自治会は, A県を介し,Dに対して石綿飛散防止の措置が十分に講じられるように求める申入れを行った。そ の結果,B地区自治会とDとの間で資料1のような内容の公害防止協定が交わされた。
その後,Dは,ビル2の解体作業に着手したが,E宅の敷地内の大気中に,公害防止協定第2条で定めた許容基準を超える石綿が浮遊していることが確認された。A県が調査したところ,Dは, 石綿を発生,飛散させる原因となる建築材料の除去を行う場所をほかの場所から全く隔離していないことが明らかとなった。
資料2は,厚生労働省石綿について一般向けに説明するために作成したパンフレットの抜粋で あり,これを参照しながら,以下の設問に答えよ。


〔設問1〕
Dによるビル2の解体作業がなお続いているという状況の下で,A県知事としては,どのよう な措置を講ずることができるか。また,Eは,Dに対してどのような訴訟上の請求をすることが できるか。


資料1
公害防止協定書
B地区自治会とDは,Dが行うビル2の解体工事について,同ビルの近隣住民のために次のとおり 公害防止協定を締結する。
第1条 Dは,その所有するビル2の解体工事に当たって,周辺に石綿を飛散させないための措置を 講ずることを約束する。
第2条 Dは,近隣住民の自宅敷地内の大気中において,1リットルにつき1本を超える石綿を飛散 させないことを約束する。



資料2
(1) 石綿(アスベスト)とは?
石綿(アスベスト)は,天然に産する繊維状けい酸塩鉱物で「せきめん」「いしわた」と呼ばれ ています。
その繊維が極めて細いため,研磨機,切断機などの施設での使用や飛散しやすい吹き付け石綿 などの除去等において所要の措置を行わないと石綿が飛散して人が吸入してしまうおそれがあり ます。以前はビル等の建築工事において,保温断熱の目的で石綿を吹き付ける作業が行われてい ましたが,昭和50年に原則禁止されました。
その後も,スレート材,ブレーキライニングやブレーキパッド,防音材,断熱材,保温材など で使用されましたが,現在では,原則として製造等が禁止されています。
石綿は,そこにあること自体が直ちに問題なのではなく,飛び散ること,吸い込むことが問題 となります。
(2) 石綿が原因で発症する病気は?
石綿(アスベスト)の繊維は,肺線維症(じん肺),悪性中皮腫の原因になるといわれ,肺がん を起こす可能性があることが知られています(WHO報告)。石綿による健康被害は,石綿を扱っ てから長い年月を経て出てきます。例えば,中皮腫は平均35年前後という長い潜伏期間の後発 病することが多いとされています。仕事を通して石綿を扱っている方,あるいは扱っていた方は, その作業方法にもよりますが,石綿を扱う機会が多いことになりますので,定期的に健康診断を 受けることをお勧めします。
石綿を吸うことにより発生する疾病としては主に次のものがあります。労働基準監督署の認定 を受け,業務上疾病とされると,労災保険で治療できます。
石綿(アスベスト)肺
肺が線維化してしまう肺線維症(じん肺)という病気の一つです。肺の線維化を起こすもの としては石綿のほか,粉じん,薬品等多くの原因があげられますが,石綿のばく露によって起 きた肺線維症を特に石綿肺と呼んで区別しています。職業上アスベスト粉じんを10年以上吸 入した労働者に起こるといわれており,潜伏期間は15~20年といわれております。アスベ ストばく露をやめた後でも進行することもあります。
イ 肺がん 石綿が肺がんを起こすメカニズムはまだ十分に解明されていませんが,肺細胞に取り込まれ
石綿繊維の主に物理的刺激により肺がんが発生するとされています。また,喫煙と深い関係 にあることも知られています。アスベストばく露から肺がん発症までに15~40年の潜伏期 間があり,ばく露量が多いほど肺がんの発生が多いことが知られています。治療法には外科治 療,抗がん剤治療,放射線治療などがあります。
ウ 悪性中皮腫 肺を取り囲む胸膜,肝臓や胃などの臓器を囲む腹膜,心臓及び大血管の起始部を覆う心膜等
にできる悪性の腫瘍です。若い時期にアスベストを吸い込んだ方のほうが悪性中皮腫になりや すいことが知られています。潜伏期間は20~50年といわれています。治療法には外科治療, 抗がん剤治療,放射線治療などがあります。
(3) どの程度の量のアスベストを吸い込んだら発病するのか?
アスベストを吸い込んだ量と中皮腫や肺がんなどの発病との間には相関関係が認められていま すが,短期間の低濃度ばく露における発がんの危険性については不明な点が多いとされています。 現時点では,どれくらい以上のアスベストを吸えば,中皮腫になるかということは明らかではあ りません。
(4) 省略
(5) アスベストを吸い込んだかどうかはどのような検査で分かるのか?
胸部エックス線写真でアスベストを吸い込んでいた可能性を示唆する所見が見られる場合もあ りますが,アスベストを吸い込んだ方すべてに胸部エックス線写真の所見があるとは限りません。
(6) 吸い込んだアスベストは除去できるか?
いったん吸い込んだアスベストの一部は異物として痰の中に混ざり,体外に排出されますが, 大量のアスベストを吸い込んだ場合や大きなアスベストは除去されずに肺内に蓄積されると言わ れています。
(7) アスベストが原因で発症する疾患に特有の症状はあるか?
発病し,更にある程度進行するまでは無症状のことが多いと言われています。
(8) 中皮腫や肺がんの発症を予防するにはどうすればよいか?
過去,石綿にばく露したことによる中皮腫や肺がんの発症を予防することについては現在有効 な手段は明らかではありませんが,石綿を吸い込んだ方がすべて中皮腫を発症するわけではあり ません。吸い込んだ石綿の量,期間,種類によって異なります。
肺がんについては,石綿ばく露と喫煙との組合せで肺がんの発症は相乗的に上昇するとの報告 があり,禁煙は重要です。
(9) 省略

(10) 省略

(11) 昔,石綿工場の近くに住んでいたことがあるが大丈夫か?
中皮腫は吸い込んだ石綿の量が多いほど発症のリスクが高いと考えられており,労働者など直 接石綿又は石綿含有の製品を取り扱う方は大量にかつ長期にわたって吸い込むので,最もリスク が高いと考えられています。
昭和30年代から40年代ころの間に石綿工場の周辺に居住していた住民の中皮腫の発症につ いては,その実態が明らかではありませんが,国においても情報の収集等を行って,一般住民の リスクについて検討することとしています。
(12) 省略
(13) 省略
(14) 省略
(15) 建築物(事務所,店舗,倉庫等)はアスベストの危険性があるか?
建築物においては,
・ 耐火被覆材等として吹き付けアスベストが
・ 屋根材,壁材,天井材等としてアスベストを含んだセメント等を板状に固めたスレートボード等が
使用されている可能性があります。
アスベストは,その繊維が空気中に浮遊した状態にあると危険であると言われています。
すなわち,露出して吹き付けアスベストが使用されている場合,劣化等によりその繊維が飛散 するおそれがありますが,板状に固めたスレートボードや,天井裏・壁の内部にある吹き付けア スベストからは,通常の使用状態では室内に繊維が飛散する可能性は低いと考えられます。
吹き付けアスベストは,比較的規模の大きい鉄骨造の建築物の耐火被覆として使用されている 場合がほとんどです。
建築時の工事業者や建築士等に使用の有無を問い合わせてみるなどの対応が考えられます。
(16) 建築物(事務所,店舗,倉庫等)に吹き付けアスベストが使用されている場合においては,ど うしたらよいか?
吹き付けられたアスベストが劣化等により粉じんを発散させ,労働者がその粉じんにばく露す るおそれがあるときは,除去,封じ込め,囲い込み等の措置を講じなければならないこととされ ています。


2.大気汚染防止法上の措置
「えっと、A知事の措置ですが、大気汚染防止法で、アスベストの規制がされていたはずです。確か、『特定粉じん』(2条8項)でしたっけ。」緊張のため、カップを持つ手が震える。


「うふふ、そうなるわね。」優雅に香りを楽しみながらお茶を飲む、ほむら先生。


「えっと、大防法18条11に基づき、都道府県知事が改善命令等ができる、こんな感じでどうでしょう?」

大気汚染防止法18条の11 都道府県知事は、特定粉じん排出者が排出し、又は飛散させる特定粉じんの当該工場又は事業場の敷地の境界線における大気中の濃度が敷地境界基準に適合しないと認めるときは、当該特定粉じん排出者に対し、期限を定めて当該特定粉じん発生施設の構造若しくは使用の方法の改善若しくは特定粉じんの処理の方法若しくは飛散の防止の方法の改善を命じ、又は当該特定粉じん発生施設の使用の一時停止を命ずることができる。


「ダメよ。きちんと法律の条文を読まないと。せっかちな男子は嫌われるぞ☆」ウィンクを決めるほむら先生。


「えっと、あ、そうか。『特定粉じん発生施設』って、特定粉じんを発生等させる『工場又は事業場に設置される施設』(2条11項)ですが、今回は普通の建物の解体工事なんですね。そうすると、大防法上の規制対象ではないのかな?」


「あら、今日は間違ってばかりよ。困ったわね。ちょっと刺激が必要かしら。1つ間違える毎に、1つ私の言うことを聞くってのはどうかしら。」


「なんか、これだと、いくつ言う事を聞かないといけないか分からないんですが…。」


「大丈夫よ、きちんと条文と判例と基礎知識を使ってあてはめるだけなんだから。」満面の笑みのほむら先生に、押し切られる。


「えっと、今回のような建築工事は『特定粉じん排出等作業』に該当します(2条12項)。そこで、届出制(18条の15)となっており、建築材料の除去を行う場所をほかの場所から全く隔離していないことが『作業基準を遵守していないと認めるとき』として、作業基準適合命令等(18条の18*1)を出すことができます。」


「そのとおりよ。ちょうど、平成7年の阪神淡路大震災アスベスト飛散の問題が生じて、平成8年改正でこの規制が入ったのよ*2東日本大震災を受けた平成25年改正では、事前調査結果の掲示義務等のアスベスト対策強化が導入されているわ*3。」


3.周辺住民の措置
「次の、周辺住民ですが、まずは、公害防止協定違反があることをうまく使いたいところですね。」


「視点はいいわね。後はこれをどう使うか、ね。」


「締結主体が、Eじゃなくて、自治だってことが気になるんですよ…。」


「いい視点ね。そうすると、Eはどういう議論をして自分に訴権があると言うのかしら。」


「う〜ん、三者のためにする契約(民法537条)とかでしょうか。」


「これはいい考え方ね。ある裁判例は、廃棄物広域処分組合、町、そして自治会が締結した公害防止協定において、「周辺住民」から要求があったときは、組合は町を通じて資料の閲覧をしないといけないとしているところ、これを第三者のためにする契約と認めているわね*4。産業廃棄物処理場についてのものだけど、住民団体が業者と締結した協定の履行請求権を、調印した住民団体代表者は、地域住民個々人の法益のために、同人達に帰属する権利を協定によって設定する立場で、右住民の代表として協定に調印し、それを業者も受容した等として、住民自身が協定に基づく請求権を行使できるとした裁判例*5もあるわ。」



「後は、公害防止協定の法的拘束力ですが、今回は私人間ですから、行政が主体の場合と異なり*6、あまり問題は多くなく、契約の性質を持つことから、任意の合意で、法的義務が定められており、公序良俗違反に違反しない限り、その協定は有効です。」


「それで、今回はどうなの。」


「まあ、両方とも任意に合意していますし、内容は1リットル1本という具体的で明確な基準が示されていて、これは、アスベストによる被害防止のために合意された合理的なもので、公序良俗に違反しません。」


「まあ良しとしましょうか。」


「請求としては、協定1条に基づく飛散防止措置を講じるよう請求する感じですかね。」


「この義務は、やや曖昧だから、『大防法上の義務があることを前提に合意がされた』等して、例えば、具体的な飛散防止措置の義務の内容が少なくとも、大防法18条の17*7の『作業基準』の遵守にある等と明確化しないと、何をしなければいけないのか分からないというのが注意が必要ね。工事中止までは求められないのかしら。」


「後は、かなめ先生のおっしゃっていた産業廃棄物処理場についての判例を『はしご』にします。この事案では、公害防止協定において住民の搬入中止請求が認められているものの、廃棄物撤去請求について何も記載されていなかったところ、『同定めが存在しないことを理由に安易に右撤去請求権がないものと断定することは相当でない』とした上で、当事者の意思解釈をした上で、中止要求に従わず更に廃棄物を捨てたため、廃棄物飛散防止のために廃棄物を撤去するしかなくなっているという状況に鑑み、廃棄物撤去請求権を認めています。今回も、公害防止協定には、明文での工事停止は記載されていなくとも、飛散防止のために、工事を停止するしかなくなっている状況であれば、工事停止を求めることもできるのではないでしょうか。」



「そうすると、Eの請求は、公害防止協定に基づくものだけかしら?」


「いいえ、Eは、Dの工事の結果、少なくとも、じん肺中皮腫等の生命・身体に対する侵害の危険が、不快感に留まらず、合理的な不安・恐怖感を生じさせており、平穏な生活を侵害しているとして、人格権に基づく差止が可能です*8。」


「どんな請求をするのかしら。」


「一般論としては、加害者側への情報の偏在、そして、むしろ加害者側に選択権を与えられることを根拠に抽象的差止も認められると考えます*9。しかし、汚染源が複数ある場合に、例えば、『E宅の空気中に1リットル1本以上のアスベストを侵入させないこと』といった抽象的差止を求めると、Dにとって無理を強いる可能性があり、認めにくいといえます*10。本件事案では平成19年4月にCによるビル1の解体が始まり、6月にDがビル2の解体をしようとして、公害防止協定についての話し合いが始まったというだけで、ビル2の解体作業着手時点で、既にCによるビル1の解体を原因とするアスベストの放出が収束していたのであれば、単一汚染源として抽象的差止は認められますが、そうでないと、抽象的差止は認められないということになると思われます。」



「まあ良いのではないかしら。」こう言って、お茶を飲み干すほむら先生の喉の動きに目が釘付けになる。


「問題は、受忍限度を超えた違法で、被害の性質と内容、加害行為の内容と程度、加害行為の行政的基準遵守状況、被害防除措置の状況等を総合的に考慮します*11が、公害防止協定第2条で定めた許容基準を超える石綿が浮遊していることが確認されています。この基準(1リットル1本)は、敷地境界線基準である1リットル10本*12より少ないものの、県を通じて合意した準公的な基準として、こちらを行政的基準と見るべきです。そして、被害はじん肺中皮腫等の重大なものであり、しかも、Dが被害防除措置等を取っていない状況に鑑み、受忍限度違反が認められます。」


「この問題の少しいやらしいところは、アスベストの浮遊量が公害防止協定の基準を超えたというだけで、一般的な基準との関係が問題文にないというところね。例えば1リットル2本だったら、公害防止協定も何もなければ、受忍限度内になるかもしれない。原告としては、そこを公害防止協定でもって補充することが必要ね。」


「後は、差止を緊急に必要とすることから、仮処分を使う*13という感じですかね。」


「あら、よくできているじゃない。お茶、もう一杯入れてくるから、設問2も頑張ってみてね!」ほむら先生が立ち去った後には、キーマンとはまた違う香りがほのかに残っていた。

まとめ
 ということで、昨日は職場の新年会で、全く更新できる状況ではありませんでした。申し訳ないです。なんとか今日からまた更新を続けて行く予定ですので、よろしくお願いします。

*1:平成25年改正適用後は18条の19

*2:北村393頁

*3:Basic158,159頁

*4:東京地八王子支判平成8年2月21日判タ908号149頁、なお、限界について自治体環境行政法71頁、Basic64頁、札幌地判昭和55年10月14日判時988号37頁参照

*5:奈良地五條支判平成10年10月10日判時1701号128頁

*6:行政が主体の場合につき、環境法ガール第1話 平成24年第1問設問1 - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常参照

*7:改正後は18条の18

*8:Basic403頁参照

*9:最判平成5年2月25日集民167号下359頁、Basic405頁

*10:Basic406頁参照

*11:http://d.hatena.ne.jp/ronnor/20140102/1388593028

*12:施行規則16条の2

*13:民事保全法23条2項