アホヲタ元法学部生の日常

アニメを見て法律を思い、法律を見てアニメを思う法アニクラスタ、ronnorのブログ。頻繁にツイッター(@ahowota)に出没しております。メールはronnor1あっとgmail.comへ。BLJにて「企業法務系ブロガー」として書評連載中。 #新人法務パーソンへ #オタク流勉強法 #明認方法 「アホヲタ元法学部生の日常」(ブログ)、「これからの契約の話をしよう」(同人誌)、『アニメキャラが行列を作る法律相談所』(総合科学出版)等。

環境法ガール21〜 誰を選ぶの!?クリスマスパーティーその2 平成18年第2問設問2


注:本作品は、環境法司法試験過去問を小説方式で解説するプロジェクトです。本作品に登場する人物は、実在の人物と全く関係ありません。


1.波乱のクリスマスパーティー
「じゃあ、クリスマスパーティーに移りましょう。」ほむら先生のかけ声で、僕たちは、パーティーの準備をはじめる。


そうはいっても、所詮は文系の研究室。一部の理系の研究室のように、「アルコールランプでイカを炙り、ビーカーでアルコールを飲む」という訳にはいかず、市販品をベースに簡単な細工をするだけだ。器用にカラメルを「ノリ」にして、市販のプチシューでシュークリームタワーを築いているのはさくらちゃん。ロールケーキをブッシュドノエル化しようと、チョコレークリームを塗るのに苦戦しているかなめさん。あ、僕は、市販品のクリスマスチキンを買って持って来ただけなのですが。


「お茶が入りましたよ。今日はちょっと甘目のお菓子ばっかりだから、ヌワラエリヤがいいんじゃないかと思って。本当は、後数ヶ月待つとクオリティシーズンのが出るんだけどね。」ほむら先生が爽やかな花の香りのするカップを持ってくる。


「『お茶のシャンパン』もいいですけど、クリスマスパーティーなら本物のシャンパンでしょう。」そういってシャンパンを取り出すさくらちゃん。

乾杯をして、美味しいクリスマス料理に舌鼓をうちながら、宴もたけなわになった頃、ほむら先生が立ち上がる。


「じゃあ、プレゼント交換を始めましょうか。」


ほむら先生に、プレゼントを準備するように言われていた。4つのプレゼントに番号が振られ、1〜4の数字を書き込んだ籤を引く。



「まずは、私ね。1番!」高らかに叫ぶほむら先生。


「残念です。先輩にあげたかったのに…」怨嗟の声を上げるさくらちゃん。


「あら、可愛いぬいぐるみじゃない。早速研究室に飾らせてもらうわ。」本棚の上の特等席に飾るほむら先生。

「これ、昔さくらちゃんが好きだったぬいぐるみと同じものだよね。夜はぬいぐるみを抱かないと眠れなかったんだよね。」思わずつぶやく。


「もう、先輩ったら、そんな恥ずかしいこと言わないでくださいよ。」さくらちゃんは笑いながら顔を赤らめる。


「あの、勝手に盛り上がっているんだったら、私が引くわよ。3番。」かなめさんはちょっとすねた感じだ。


「まあまあ、かなめさんも落ち着いて」ほむら先生が仲介に入る。


「あっ、『憲法ガール』」かなめさんの顔がほころぶ。


「誰にあげても喜んでもらえるプレゼントって考えて、これを最初に思いついたんだ。」


「べ、別に誰が選んだから嬉しいなんてことじゃなくて、ただ、『憲法ガール』が読みたかったってだけなんだからねっ。」聞かれてもいないのに、そういうことを言い出すかなめさん。


「欲しかったな、先輩からのプレゼント。」ぼそっと、寂しそうにつぶやくさくらちゃん。


「まあ、あとプレゼントは2つあるから大丈夫よ。特に私のプレゼントはスペシャルよ。最後は2人同時に引きましょう。」慰めるほむら先生。


さくらちゃんと一緒に、箱に手を入れる。一瞬さくらちゃんの暖かい手に触れてドキっとしていると、さくらちゃんが、その隙にくじを拾い上げる。


「私は2番!」叫ぶさくらちゃん。


「僕は4番だね。」


「べ、別に誰がもらってもいいんだけど。」そんなことを言いながら、4番のプレゼントを渡すかなめさん。開けてみると、手編みのマフラーが出て来た。


「暖かそうだね。ありがとう。」


「寒いんだから、きちんと毎日巻きなさいよ。風邪でも移されたらたまったもんじゃないんだから。」顔を赤らめるかなめさん。


「さくらちゃんには『スペシャルプレゼント』よ。」そういって、封筒を渡すほむら先生。


「まさかほむら先生のことだから、私製手形*1とかじゃないですよね…」警戒を隠さないさくらちゃん。


「そんな訳ないでしょ。」微笑むほむら先生。


「え、試験問題?」さくらちゃんが素っ頓狂な声を上げる。そうか、さくらちゃんは、ほむら先生のプレゼントを経験した事がないのか*2

Aは,B県C町にある自己所有の山林を造成して,ゴルフ場を開発する計画を立てた。Dらは,隣接するB県E市に居住する住民であり,古くから桜や紅葉の名所として名高い上記計画地域にハイキングに訪れ,森林浴を楽しんできた。また,上記計画地域には,絶滅が危ぐされている野生生物が生息している。Dらは何とかこの開発を阻止したいと考えている。この場合について,以下の設問に答えよ。
設問の事例を踏まえて,このような紛争を未然に防止するためにどのような法政策的仕組みが考えられるか。環境法の理念といわれている環境権と関連させて論ぜよ。

「当選したさくらちゃんには、きちんと答えて頂きましょう。」ほむら先生が促す。


「桜や紅葉の名所であり、絶滅が危ぐされている野生生物が生息しているという環境利益を、事業の意思決定に反映させるための法制度が必要です。これは、環境影響評価制度です。」ため息をつきながら答えるさくらちゃん。


「きちんと制度が出ているわね。じゃあ、現行の環境影響評価制度で、Dらの利益は守られるのかしら。」


「現行法でも計画段階、及び事業段階において環境影響評価をすることができ、例えば、野生動物の生息域を外した場所にゴルフ場を作るだとか、野生動物の生態に影響が出にくいような事業内容にするといったことが期待されます。しかし、現行法では、戦略的環境影響評価がないため、そもそも、ゴルフ場を作るべきかといった検討の段階での環境影響評価は義務付けられていません。さらに、現行法では、環境影響評価法の対象は、13の開発事業に限られており、ゴルフ場は入っていません*3。」かなめさんがすらすらと述べる。


「そういえば、地方自治体によっては環境影響評価条例で、ゴルフ場のような環境影響評価法の対象とされていない種類の事業や比較的小規模な事業について環境アセスメントを義務付けているって聞いたな。」


「そうね。環境影響評価は1つの方法だけど、現実の問題に即して現行法を『法の目的を達成しているのか』といった観点から批判的に検討するのは大事ね。ところで、環境権との関係ではどうかしら。」


「環境権は、憲法25条や13条を根拠に主張されており、環境基本法3条や19条の規定はこれを踏まえたものといわれます。もっとも、環境権を私権と見て、これを訴訟で実現するのは難しいものの、環境権の手続的側面を強調し、従来環境権として主張されてきたものを、純粋私人の環境公益形成参加権と、公的市民の環境公益実現請求権と捉え直す考えも提唱されています *4。」かなめさんが難しいことをさらっという。


「景観利益について国立市大学どおりマンション事件判決がいったとおり、何が公益として保護すべき環境上の利益なのかは、社会的に決められるべきだけれども、その決定に参加することができないといけない*5。そして、一度それが保護・尊重されるべき環境公益だということが法律や条例のような形で決まったら、その実現を求めることができる。こういう関係だね。」


「先輩の整理だと、市民が持つ具体的権利は、環境公益の形成と実現に参画する公法上の権利(行政手続権)になりそうですね*6。」


「そうすると、このような意味での環境権は、環境影響評価制度にどのように実現されているのかな。」


環境影響評価法においては、市民の意見を聞く手続が入っています。配慮書段階での努力義務(3条の7参照)、方法書の段階での8条意見、準備書の段階での18条意見があり、これらを勘案して準備書に検討を加え、評価書を作成します。評価書には、市民の意見をどのように受け止めてどのように対応したかの見解も求められます(21条2項4号)。」


「そういう意味で、参加的側面も現行法に現れているんですね。」


「でも、不足している部分としては、いわゆるスクリーニング手続に住民参加の機会がないことが挙げられるね*7。」


「じゃあ、他の政策はどうかな。」


「あとは、自然公園法に基づく自然公園の指定をするとか、自然環境保全法に基づく自然環境保全地区*8に指定するとかでしょうか。」さくらちゃんが頭をひねる。


「野生動物の種類にもよりますが、種の保存法に基づく生息地等保護区*9に指定することも考えられるかな。」

「こういうゾーニングは大事ね。保護の必要性の高さに応じて、いわばランキングをつけて、そのランキングを反映して規制の濃淡をつけるのよ*10。」


「環境管理団体指定制度(自然公園法49条以下、75条)や風景地保護協定制度(43条以下、74条)等、現在の自然公園法では、NPO環境保護団体の参加を促進しています。新たな環境管理手法として注目ができます*11。」


「他には、行政や環境保護団体がAと協定を結んだり、場合によってはナショナルトラスト運動ではないですが、その土地を買い上げてしまうことも考えられます。あとは、環境管理計画や、環境団体訴訟等ですかね。」


「よい答えが出たわね。環境権との関係、特に各個別法がどのように市民の参加を促進しているのかという観点から、個別法を見直すのが大事よ。今日はもう遅くなったから、お開きにしましょうか。」


ほむら先生の言葉に時計を見ると、そろそろ終電だ。


「そうですよ。私たちには明日があるんですから、ね。」と同意をもとめるかなめさん。


「えっと、明日って?」


「今日はほむら先生に予定を入れられちゃったんだから、消去法でいうと、明日よね。」かなめさんが真剣な目で僕の方を見ながら迫ってくる。


「あら、明日から冬休みにかけては、本格的に研究計画を作ってもらうわよ。大変な作業だから、私の研究室に泊まって行っていいわよ。酔っぱらっているなら、今日からでも大丈夫よ。」ウィンクをするほむら先生。



「だめです。先輩は、明日は私とデートするんです!」さくらちゃんが二人を押しのける。



「「「で、結局誰を選ぶの?」」」三人の声がハモる。



ゾーニングして3人全員と、って訳にはいかないんだろうなぁ…。

まとめ
ということで、環境法ガールはやっと平成18年まで遡りきりました。後は平成25年ですね。

*1:手形・小切手法を勉強するには、友だちが、『新年会続きでお金ないから、仕送りが届く月末までちょっと1万円貸してくれ』と依頼した際に、私製手形を作るのが一番良い方法です。なお、相手がお金を返さず、手形訴訟まで起こせれば最高です。(私製手形による手形訴訟が却下された事案として東京地判平成15年10月17日判タ1134号280頁参照。なお、これについての解説であるhttp://www.tkclex.ne.jp/commentary/pdf_data/2004-003.pdf最高裁第2小法廷とするが間違い。)

*2:参照

*3:北村312参照

*4:北村53頁

*5:「環境公益は、参画なしには決定できないものである。」北村53頁参照

*6:北村54頁参照

*7:北村343頁

*8:Aの土地であり、原生自然環境保全地区に指定できないことに注意、14条1項、BASIC327頁参照

*9:より実効性があるのは37条の管理地区

*10:北村568頁

*11:北村566〜568頁、Basic322頁