アホヲタ元法学部生の日常

連絡はTwitter ( @ahowota )でお願いします。アニメを見て法律を思い、法律を見てアニメを思う法アニクラスタ、ronnorのブログ。メールはronnor1あっとgmail.comへ。BLJにて「企業法務系ブロガー」として書評連載中。 #新人法務パーソンへ #オタク流勉強法 #明認方法 「アホヲタ元法学部生の日常」(ブログ)、「これからの契約の話をしよう」(同人誌)、『アニメキャラが行列を作る法律相談所』(総合科学出版)等。

ついに発売!大島義則『行政法ガール』

行政法ガール

行政法ガール


1.待望の『憲法ガール』の続編

憲法ガール

憲法ガール

受験生の間に大好評を博した、『憲法ガール』。当ブログでも、僭越ながら書評させて頂いた。
新時代の司法試験は、ライトノベルで対策完了? ー大島義則「憲法ガール」 - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常


同書の著者の大島先生の待望の新作が、『行政法ガール』である。


2.ここがすごい!
 これまで、「行政法の演習書」は多く出版されているし、橋本博之『行政法解釈の基礎』を代表とするような「仕組み解釈」の本も存在した。しかし、これまで、網羅的な形で*1「仕組み解釈」をどのように具体的に司法試験の各過去問に適用して解いて行くのかを解説した本はなかったように思われる。その点において、『行政法ガール』は画期的な意味を持つ。
 例えば、平成25年の問題で、賦課金の徴収の仕組みから処分性を検討する技法(17頁以下)、平成20年の介護保険法上の勧告の位置づけを読み解く技法(105頁以下)等、受験生の皆様が、『行政法ガール』を使って、きちんとおさえておけば必ず合格の助けになるだろう。


 次に、小説のストーリーに沿って学べることである。ネタバレにならない程度に要約すれば、時間的には『憲法ガール』の後であり、「僕」が京都旅行をした際の新たな「出会い」と「冒険」がその内容になっている。『憲法ガール』を読んでおけば、*2より楽しめる一冊になるが、『憲法ガール』とは独立のストーリーであることから、『行政法ガール』だけを読んでも楽しめる*3



 更に、最近の新司法試験問題の傾向を踏まえた対策方法が論じられているところである。例えば、司法試験行政法過去問を検討すると、すぐに分かるのは「ヒント」の多さである。「もうそこに、ほとんど答えが書いているんじゃないか」というほどの強烈な誘導*4に、じゃあ、問題文を誘導に従って並べれば合格するのではないかという錯覚を覚える受験生もいるだろう。しかし、それは錯覚に過ぎないのであって、ヒントを踏まえてどのように合格答案を書くかは、『行政法ガール』201頁以下の「ラミ先生のワンポイントアドバイス」を参照されたい。
 また、実務家として行政法に向き合っている方と受験生の違いとして、「各個別法の個別条文の趣旨」をどこまで重視するかがあるだろう。司法試験で問われるのは、訴訟要件論だけではなく、本案論、つまり、なぜその個別の行政処分が違法/適法なのかも問われる。しかし、その本案上をどう主張するのかについては、受験生はあまりよくわかっていない気がする。『行政法ガール』140頁以下の「ラミ先生のワンポイントアドバイス」では、処分根拠法規の趣旨目的に照らした本案論の書き方が説明されており、大変有益である。



3.まずはサンプルから
 『行政法ガール』第一話の原型は、
行政法ガール 第1話「新たな出会い ~平成18年新司法試験その1~」 - インテグリティな日々
という形で、インターネット上に掲載されている。


 また、「はしがき」
「はしがき」【pdf】


 及び、「目次」
「目次」【pdf】


 も公開されている。


 『行政法ガール』に興味を持たれた方は、まずは、サンプルを読まれてはいかがだろうか。



4.広がる『行政法ガール』の世界
 『行政法ガール』の出版を記念して、これまで、ほぼ日刊として、「法クラ流行語大賞等を伝えてきた「法クラ新聞」(@inflorescencia)が、(隔)月刊法クラ新聞として発刊されていることは注目に値する。


(隔)月刊法クラ新聞【pdf】


個人的にはあの中村真先生が四コマを書かれているのが面白かった。



WebLOG弁護士中村真


更に、超豪華景品がもらえると、一部業界で話題になっているのが、行政法ガール吹き出しコンテスト」である。


行政法ガール吹き出しコンテスト!



憲法ガール』のメインヒロインのトウコちゃんと、『行政法ガール』のメインヒロインのシエルさんが言い争いをしている絵の「吹き出し」に適切な言葉を入れるものであり、なんと、優秀賞は「著者と1日すごせる券」である。大島先生と1日京都旅行をして『行政法ガール』の「聖地」を巡る等の妄想が広がる大変素晴らしい企画と思われる。



さらに、『行政法ガール』出版記念の講演会も開催される。


京都産業大学 大学院 法科大学院/法科大学院 特別講演会「行政法ガールの著者司法試験を語る」開催


http://www.kambaikai.jp/member/index.html


まとめ
 『行政法ガール』は、司法試験過去問をどのように仕組み解釈で解いて行くのかを小説形式で説明する、素晴らしい本である。『憲法ガール』ファンや司法試験受験生はもちろんであるが、行政事件で説得的な主張をどう組み立てればいいか悩まれている実務家の方、行政法好きの学部生の方にも読んで頂きたい。


 そして、『行政法ガール』は、新聞に、吹き出しコンテストに、そして、講演会にと、更なる広がりを見せる。『行政法ガール』の世界がどこまで広がって行くのかについても同時に注目して行きたい。

*1:つまり、橋本博之『行政法解釈の基礎』のように、仕組み解釈とは何かを知る上で教育的効果が高い物をセレクトし、事例を微妙に変えるといったものを除くということ

*2:特に「補話」

*3:個人的には、メインヒロインのシエルちゃんよりも、妹のルナちゃんの方がお気に入りではあるが、それは、私がロリコンだからであろうか?

*4:202頁

石川義夫『思い出すまま』〜戦後30年の「裁判所の裏の裏」を知る一級資料

思い出すまま

思い出すまま

1.淡々とした筆致で「全て」を語る
 「裁判所の裏の裏」を知ることができる本、等というと、普通の人は、いわゆる暴露本をイメージするのではないか。そして、最近の裁判所に関する「暴露本」は、私の知る限りあまり成功していないものが多いのは事実である。いわゆる「暴露本」の失敗の理由は、個人的な怒りの感情が先行していることや、サンプル数1(n=1、しかもランダムサンプリングではなくサンプル=俺)の例を使った「客観的」、「根源的かつ構造的分析」、(根拠が明示されていれば納得し得るのに)根拠が曖昧で陰謀論っぽく感じられること等が指摘できるだろう。

 このような「暴露本」と一線を画しながらも、中身としては、裁判所の「裏の裏」まで語りつくした本が、石川義夫『思い出すまま』である。同書は、矢口浩一最高裁長官の後継者と目されながら、結果的に異なる道を歩んだ裁判官が、1950年から1981年までの約30年間の裁判官生活を詳細かつ赤裸々に記した著書である*1



 同書のスタンスがいわゆる「暴露本」と大きく違うことは、倉田卓次判事の推薦があることからもよくわかる。倉田判事は、


君子は交わり絶って悪声出さず。組織を離れると、まるで人が変わったみたいな悪口を言い出す人があるが、私の趣味ではない。
倉田卓次『裁判官の戦後史』(はしがきの2頁目)

という明言を残しているように、エリート裁判官として支配側にいながら、辞めた後に、被害者顔をして「実は私は反対だった」と言い出すようなことを絶対に認めないだろう


その倉田判事が、誰にでも「そのままお読みなさい」と薦められる*2とお墨付きを与えていることは重要である。倉田判事によると、一高時代の寮で一緒だった石川判事にオネスト・ジョン」というあだ名をつけたそうで、その理由は、石川判事がウソの吐けない真っ正直な男だからということだ*3



そして、実際に、『思い出すまま』は、変に気負わず、淡々と、まさに「思い出すまま」に、裁判官だった当時を振り返っていることから、逆に、法曹になりたい人の成長に役立つ本であり、かつ、戦後裁判史を知る上での一級資料となっていると言っていいだろう。



2.躊躇なく語られる失敗談
 往々にして、自伝を書く場合には、成功談のみがクローズアップされ、失敗談が極小化される。自分にとってあまり書きたくない話をきちんと書く人は少ない。裁判官の自伝もので失敗談を比較的きちんと書かれているなと感じたものとしては、倉田卓次『続々裁判官の戦後史』285頁以下の、いわゆる「家畜人ヤプー」事件の総括であったが、石川義夫『思い出すまま』もその意味ではかなりよくできている。



・刑事事件を単独でできるようになった頃、昔の裁判長をまねて、余裕を見せつけるために被告人をからかうようなことを言ったところ、判決時に不満をもった被告人が、椅子を振りかぶって裁判官席にとびかかろうとして、あわやとなり、人まねはダメだということをしみじみ反省させられた*4
検察庁から「被疑者との闇取引」というまったくのウソがリークされて新聞記事でやり玉に挙がった。新聞社に事実無根だと主張したら、記事訂正は人目につかないところへ載せるので石川さんは満足されないだろう、それよりも、コラム欄で反論してはどうかと言われて、反論文を掲載してもらった*5
・子供の名前をどうしようか迷っているうちに14日以内に出生届を提出できず、同僚の簡裁判事のところに過料請求が来てしまった。「判事は、同室のよしみで、過料をとらない処置をしてくれたようだった。」*6


 等々。このような、「失敗」エピソードは、(その対処法は現在そのままはあてはまらないにしても、)若手法曹や、修習生等にとって良い教材になるだろう。


3.周りの人への率直な評価
 同書では、周りの人への率直な評価が展開される。要するに、いい人は徹底的にほめるし、悪い人は徹底的に実名でエピソードを挙げている。


 いい方だと、当時の五鬼上堅磐大阪高裁長官*7のエピソードがある。石川判事が大阪高裁に着任する際、どの部も石川判事を受け入れようとしなかった。それをみかねて、長官が「石川か、あいつは出来る」と発言し、それにより受け入れ部が決まったそうである。何がすごいかと言えば、「実は五鬼上長官は私のことなどそれまでまったくご存じなかった」のだそうだ*8


悪い方だと、郡山支部支部長は「申し訳ないが、東京や横浜では考えられない完全なスクラップで、職員一同から疎まれていた。」*9となるわけで、「オネスト・ジョン」の本領発揮である(なお、同支部長の名誉のため、本ブログでは役職名のみを記載しているが、石川義夫『思い出すまま』には実名が載っている)。



4.当時の司法の「闇」
 そして、特筆すべきは、戦後司法の「闇」の部分まで赤裸々に綴っていることである。


・書記官研修所の事務局長時代、事務局職員に出張を命じた際に出張旅費の1割を「後援会費」名目でキックバックさせて裏金として利用していたことが判明した。これを石川判事の代で廃止し、旅費は全額支給するようにした*10
・地裁所長をしていた頃、事務局長が一冊の大学のノートを持ってやってきて、カラ出張で蓄えた裏金の出納について説明し、承認印を求めた。公式に拠出される交際費が少ないからしょうがなくやっているのだろうと考え、毎月ポケットマネーから1万円を拠出することにした*11


 このような裏金の実態は、戦後の「あの時代」にあったというだけで、2014年には状況は様変わりしていると思われるが、戦後司法の「闇」の一端が明らかにされるという意味で重要である。


 特に、矢口浩一最高裁長官との関係では、元々親密な関係であったが、そのあと袂を分かったこともあり、極めて辛辣である*12


・当時矢口判事自身「私を自分の後継者になぞらえていたのではないかとも思う」状況があったが、青法協を追放した、いわゆる「ブルー・パージ」問題の時期に、良心的で勤勉な青法協会員も冷遇されているのは気に入らず、矢口人事局長(当時)と電話で1時間以上話したりしたことをきっかけに、信頼関係が急速に冷えて行った*13
最高裁で主計課長を命じられた時、事務総局の裁判官達が銀座のクラブ等で飲み歩き、その「つけ」が自分のところに来て、これを「会議費」名目で処理していた。これは良くないということで、この慣行を始めたと思われる矢口判事に相談したところ、矢口判事の営繕課長時代に営繕会議費の大幅増額を勝ち取ったから心配するなと言われた。ただ、営繕会議費は工事関係者の打ち合わせのためのもので、事務総局の銀座のクラブの飲み代のためのものではない*14
・矢口判事は、2人だけの席で、裁判実務オンリーの現場の裁判官たちを「度し難い愚か者ども」と罵っていた*15
・矢口判事は人事局長時代、「裁判所の諸悪の根源は、歴代事務総長が最高裁判事に栄進することにある」と述べており、自分はそうはしないということだろうと思っていたが、その舌の根も乾かないうちに最高裁長官の席を冒すに至った」*16
・矢口判事は、人事局長時代、青法協に入会している任官希望者について、「疑わしい連中の成績を悪くしておいてくれ」と上席教官と次席だった石川判事に頼んだが、上席教官が断った*17


等々、いわゆる「清濁併せのむ」タイプの矢口長官の「濁」の部分のエピソードの数々が率直に表現されている

まとめ
 本書は、「暴露本」とは一線を画し、淡々とした筆致で戦後司法の30年を生きた裁判官の人生をありのままに明らかにしており、だからこそ、非常に成功している。
 同書を読むことで、若手法曹や法曹志望者が、赤裸々な失敗談や、人物評から様々なことを学ぶことができるだろう。
 また、戦後司法、特に矢口長官の「闇」の部分を知りたい人にとっても、率直にエピソードが開示されるという意味で、一級資料である。
 すでに出版から8年近くが経過しているが、同書には、「暴露本」にはない、色あせない価値があると思う。

*1:なお、前半は修習生までの前半生を語っている部分で、人格形成の分析という意味では役に立つと思われるが、本書評の焦点と異なるため、本書評ではあえて扱わない。

*2:石川義夫『思い出すまま』2頁

*3:石川義夫『思い出すまま』3頁

*4:石川義夫『思い出すまま』139頁

*5:石川義夫『思い出すまま』141〜142頁

*6:石川義夫『思い出すまま』157頁、なお、同事案については事実関係は曖昧であり、本書評では、あくまでも「失敗談」の一例として紹介しているに過ぎず、また、どのように解したとしても既に「時効」であることに留意されたい。

*7:ごきじょう・かきわと読む。記者会見で「一番美しいと思う女性は?」との質問に、「ワイフ」と即答した愛妻家(恐妻家?)ことでも有名。

*8:石川義夫『思い出すまま』168頁

*9:石川義夫『思い出すまま』151頁

*10:石川義夫『思い出すまま』163頁

*11:石川義夫『思い出すまま』215頁

*12:出版が、矢口長官の死亡した後ということもあり、より「オネスト」に書けるという面もあったのだろう。

*13:石川義夫『思い出すまま』188〜189頁

*14:石川義夫『思い出すまま』174〜175頁

*15:石川義夫『思い出すまま』196頁

*16:石川義夫『思い出すまま』195頁

*17:石川義夫『思い出すまま』199頁。なお、192頁、200頁に、本当に成績不良のために任官を拒絶されたが、たまたま青法協だったために、ブルー・パージだという運動が起こってしまった事案についての説明がある。流石にここは匿名になっている。

その「つぶやき」は犯罪です〜知らないとマズいネットの法律知識

その「つぶやき」は犯罪です: 知らないとマズいネットの法律知識 (新潮新書)

その「つぶやき」は犯罪です: 知らないとマズいネットの法律知識 (新潮新書)

1.被害者から加害者へ


消費者問題における古典的構造は、一部の「悪徳業者」が、一般の「消費者」を食い物にするというものである。そこで、弁護士らが、みなさん、「被害者」にならないようにしましょう、と訴えている。私も、QB被害者対策弁護団の一員として、被害防止と被害者救済のために微力を尽くしているところである。


ところが、最近は、この古典的構造が通用しなくなってきた。SNS等の急速な発達により、「友達にメールする感覚」で書いた内容が、ツイートやFacebookへの投稿等の形で全世界に公開され、これが著作権侵害名誉毀損、プライバシー侵害等になりかねない。その意味は、一般の人が今度は「加害者」になりかねないということである。


これは、まさに「地殻変動」と言っていい事柄であり、まさに、自分が魔法少女契約を結ばされた被害者だと思っていたらいつのまにか魔女化して街を壊していたという位の衝撃的な話である。


2.その「しんかん」は良書です
 この構造の変化に気づいた頃からずっと、このような時代の変化に対応した良書を探していた。


昔のものだと、

ソーシャルメディア炎上事件簿

ソーシャルメディア炎上事件簿

小林 直樹『ソーシャルメディア炎上事件簿』が比較的事例をうまくまとめており、事例集として参考になるが、法律的分析についてはこれだけで十分とは到底言えない。


そんな中で登場したのが、深澤諭史他著『その『つぶやき』は犯罪です』である。


 同書の基本的な構成は、知らないうちに「加害者」にならないための方策を説明する第1章と、もしも「被害者」になったらどうするかを説明する第2章に分かれる。このうち、タイトルにもなっている、自分が「加害者」になってしまわないようにするためにどうするかという第1章に重点が置かれており、約130頁と一番分厚くなっている。


 第1章は、まず、一般人にありがちな「勘違い」を紹介した上で、名誉毀損、個人情報漏えい、肖像権侵害、著作権侵害等の比較的SNS等でありがちな違法行為について、少し長め(新書で1頁〜2頁程度)の仮想事例を掲載した上で、わかりやすい筆致で法的にどう考えるべきかの説明を行っている。


 このようなわかりやすい説明により、一般の人でも、どういう行為が問題視されるのかについて具体的に理解することができ、ツイートする前に「あれ、大丈夫だっけ?」と考える機会が生まれるだろう。これにより、安易な違法行為や炎上を防ぐことができる。



 また、法律の素養がある人が深く調べることができるように、参考にした裁判例を引用してくれているので、一般人だけではなく、ネット名誉毀損やインターネットと著作権等に興味を持つ法学部生、ロースクール生にとっての「入門書」としての役割も果たしている。


3.疑問点
 このように、私は『その『つぶやき』は犯罪です』を高く評価しているが、高く評価しているからこそ、読んでいて感じた疑問点についてもご説明させていただきたい。


 まず、ほぼ同時期にほぼ同一の著者が「知らないではすまされない インターネット利用の心得 ケーススタディ」を刊行されている。



知らないではすまされない インターネット利用の心得 ケーススタディ

知らないではすまされない インターネット利用の心得 ケーススタディ


 この2冊はそれぞれどういうものだろうと楽しみにして2冊とも買ったが、私には、ほぼ同じ内容をほぼ同じ切り口で刊行したようにしか受け取れなかった。もちろん、違う事例が用いられているし、ケーススタディの方にはイラストが入っている。しかし、結局、それぞれの事例で著者が注意を喚起したいポイントという意味では共通していることが多い。そうであれば、この2冊を併せて1冊にした方が、より「濃厚」な一冊になったのではないかという疑問が残る。



 次に、(元記事の)コピペでも名誉毀損という議論(46頁)をする際に引用すべき裁判例は東京高判昭和31年6月20日ではなく、すでにネットに掲載されている記事を転載しても名誉毀損となるとした東京高判平成25年9月6日ではなかろうか。『その『つぶやき』は犯罪です』46頁では、「コピペであるか否かは名誉毀損の成立には関係がありません。それがオリジナルだろうと、コピペだろうと、社会的評価を下げることには変わりないからです。」として、特に判決を引用しないまま結論を出し、その上で、「うわさ」という形で他人の発言の引用でも名誉棄損罪が成立するといい、東京高判昭和31年6月20日を引用している。しかし、東京高判平成25年9月6日は、

本件情報8、9、18は、インターネット上のYahoo掲示板に掲載されていた記事を転載したものであるか、又は雑誌Gの12月号に掲載されていたものであることが認められる(甲2、乙1、弁論の全趣旨)。しかし、本件情報8、9、18をウェブサイト「2ちゃんねる」で見た者の多くがこれと前後してYahoo掲示板の転載元の記事や雑誌Gの12月号の記事を読んだとは考えられず、ウェブサイト「2ちゃんねる」に本件情報8、9、18を投稿した行為は、新たに、より広範に情報を社会に広め、控訴人の社会的評価をより低下させたものと認められる。

としており、コピペによる名誉毀損でもやはり違法であることを、特に「新たに、より広範に情報を社会に広め」「社会的評価をより低下させた」ところから説明しているものであり、事案の類似性という意味でも、東京高判平成25年9月6日の方がより適切な事例であるように思われる。



 最後に、「レストランの評価は名誉毀損になるのか」(60頁)では、鶏肉料理を出す食堂で、から揚げ定食の材料が切れたところで、から揚げ定食を頼んだ客がいて、時間をかけてもいいからもってこいというので材料を買って出したら、「料理が出てくるまでに1時間かかるのは遅すぎる」「まずい」等との口コミが書き込まれた仮想事例を題材に、このような口コミが名誉毀損になるか否かを議論している。


 一般人向けだと、こういう事例をきちんと法的に分析するのは難しいことから、そもそもこういう事例が出てこない場合が多い。その中で、『その『つぶやき』は犯罪です』は、あえてこの事例を取り上げており、その点は評価できる。


ところで、同書65頁は、この事例を論じて以下のように言う。

「真実性」についてはどうでしょうか。(中略)料理が来るまでに1時間かかったのも事実ですから、これを満たしているようにも思われます。ただ、経営者Hさんは、から揚げ定食の材料がないことを説明して謝罪し、時間がかかることも説明しているので、この点に触れずに、単に、「料理が出てくるまでに1時間かかるのは遅すぎる」とする書き込みには問題があるとも考えられます。この点をどう考えるかによって違法性の判断が変わってくるでしょう。


そもそも、これはこの問題を真実性の枠組みで検討しているのか、違法性の枠組みで検討しているのかあいまいで分かりにくい上、結局違法なのかどうかの結論が示されていない。他の部分については、概ね明快な説明がされていたので、この部分が曖昧な結論に終わったのは残念であった。


思うに、この書き込みの問題の本質は、有価証券報告書の虚偽記載でいうところの「誤解を生じさせないために必要な重要な事実の記載が欠けている」(金商法21条の2)点が問題だということであろう。



この場合、そもそも書き込みが社会的評価を低下させるかの段階で争いがあり得る。この点については、一般の読者の通常の注意と読み方を基準として、これによって一般読者が当該記事から受ける印象及び認識に従って判断し(最判昭和31年7月20日民集10巻8号1059頁*1)、その場合には、記事のうち特定の記述のみを独立して取り上げ、その部分のみを評価の対象とするのではなく、当該記事全体を読み、それから受ける印象及び認識に従って名誉毀損の成否を判断するのが相当とされている*2


例えば、見出しだけを読むと読者が誤解をしてしまうけれども、見出しは記事と一体になって読まれるのが通常なので、この2つを一緒に読めば(誤解を生じさせないために必要な情報が提供されており)社会的評価を低下させるものではないとした事案が参考になる*3


本事例でも、「一般の読者の通常の注意と読み方を基準」とすれば、本件の書き込みから、同食堂が「特段の事情もないのに客を1時間も待たせる食堂」との印象を受け、そう認識するということが言えるのではなかろうか。もしも、このように解釈することができるのであれば、真実性の証明の対象となる事実*4は、「料理が出てくるまでに1時間かかる」のか否かではなく、「特段の事情もないのに料理が出てくるまでに1時間かかる」のか否かということもできるのではなかろうか。もし、このように解釈できるのであれば、(単なる真実性でも、単なる違法性でもなく、)真実性の対象となる事実が何かの解釈という枠組みにおいて本事例について一応の結論を出すことができるだろう。



もちろん、私はネット名誉毀損について何ら専門知識を持ち合わせていないし、ここまで言い切った裁判例も発見できていない*5ところである。もっとも、せっかく、他の事例については、豊富な実務経験に基づく説得的な法的説明がされているのだから、この事例について「この点をどう考えるかによって違法性の判断が変わってくるでしょう」と正面からの回答を避けるのではなく、類似の裁判例を元に、「この点をどう考えるべきか」についての著者の私見を開陳頂ければと、少しだけ残念であった。(特に、帯にある「○△レストランってマズすぎ(#´Д`)」はこの事例のことのように思われ、その意味でも特に丁寧な説明が期待されたのではなかろうか。)

まとめ
「被害者から加害者へ」のパラダイムシフトに対応した、新時代のインターネットリテラシーの本であり、かつ、インターネットの法律問題への入門書という意義もある『その『つぶやき』は犯罪です』は、おすすめの良書である。
ただ、同時に刊行された書籍との関係、一部の参考裁判例の選択、そして、一部の事例の分析において、マイナーな疑問がない訳ではなく、改訂版等での対応が望まれるところである。

*1:電子掲示板についても昭和31年最判が適用されるとしたものとして大阪地判平成24年7月17日参照

*2:なお、この基準に基づき、雑誌記事は、原告指摘のように「無党派を名乗った原告Bが市民を騙して本件参院選に立候補した」とまでは事実を適示しておらず「原告Bについて原告Aから生活保証の提案がされたことを主な内容としている」にすぎないとした東京地判平成14年6月17日判タ1120号187頁参照

*3:東京地判平成20年12月25日判時2033号26頁、なお、別の部分についての判断は控訴審(東京高判平成21年7月15日判時2057号21頁)で変更されているが、この部分の判断は維持されている。

*4:なお、論評と思われる「遅すぎる」について真実性が問題となるのは、その基礎となる重要な事実ということだが、本事例においては、これが独立して問題となることはないと思われる。

*5:なお、大阪地判平成22年3月25日は、逆転無罪判決後に逮捕当時の記事とほぼ同じ内容をブログに書き込んだ事案であるが、(ブログ主が名誉毀損であるとの主張を回避しようとして)「わいせつ行為について逆転無罪となった旨の記載」をしていたが、それでもなお違法とされており、興味深い。

新時代の司法試験は、ライトノベルで対策完了? ー大島義則「憲法ガール」

憲法ガール

憲法ガール

1.憲法ガールとは
 「憲法ガール」は、新司法試験憲法ライトノベル風の小説で解説してくれる、素敵な試みである。
 著者は弁護士の大島義則先生
『憲法ガール』書籍化しました! - インテグリティな日々
ツイッター@babel0101



ソーシャルメディア時代の個人情報保護Q&A

ソーシャルメディア時代の個人情報保護Q&A

 等を著されている。


 司法試験の問題を題材に、魅力的なキャラクターと一緒に、出題者の問題意識と判例・学説の到達点を探る旅に出ることができるということで、Web上での公開後、瞬く間に話題になった。



 それが、ついに、ついに、書籍化された!!


 ツイッター上で大きな話題になり、
大島義則『憲法ガール』出版に対する法クラの反応 - Togetter
 アマゾンでは、「人気商品第一位」を獲得。


その流れで、ついに発売日前に重版決定


様々な伝説を作り上げている。


 このような憲法ガール」についてレビューさせて頂きたい。


2.三段階審査の人にぴったり
 三段階審査を使って司法試験の論文を書こうとされている方は、「信頼できる過去問解答・解説」に飢えてるのではないだろうか。過去問を三段階審査で解説したものは少なく、むしろ、平成22年の問題等を安易に三段階審査で解いて痛い目にあった先輩等から、 「生兵法は怪我の元」と教えられているかもしれない。


憲法ガールは、まさにこの「信頼できる過去問解答・解説」である

本書では、最近流行の「三段階審査を行い、(保護範囲→制約→正当化と思考を進めて)実質的正当化のところで違憲審査基準を用いる」というスタンスを打ち出している。このスタンスには懐疑論*1もあるが、受験生にとっては、

(1)アメリカ流の審査基準論がやや曖昧にしていた*2保護範囲論、制約論を個別に考えることで、問題に即した思考をしやすくする
(2)判例の規範を特に正当化論証で使いやすく、判例に即した「実務家」らしい議論が展開できる
(3)流行の小山『憲法上の権利の作法』宍戸『憲法解釈論の応用と展開』木村『憲法の急所』との親和性が高い

等とメリットが多いように思われる。

つまり、作法・応用と展開・急所で「一般論は分かった。じゃあ、過去問はどう解くんだ」という人にぴったりなのである。



3.違憲審査基準論の人にとってもオススメ
本書は、昔ながらの違憲審査基準を使って司法試験の論文を書こうとされている方にもお勧めできる本である。 「制度準拠審査」等、あまり従来の教科書に出てこなかった、いわゆる「三段階審査チック」な単語については、レミ先生のワンポイントアドバス等で解説がされている。

 前述のとおり、本書のアプローチは、三段階審査を使って論点を抽出(前景化)し、審査基準で書くというものである。 「三段階審査論を知っているかのように思考し、三段階審査論を知らないかのように論述する」 *3というのが本書のキーポイントであって、本書の方法論を用いた場合に実際に出来上がるのは、判例や学説の審査基準を使った答案である。


 昔ながらの違憲審査基準を使って司法試験の論文を書こうとされている受験生にとっても、従来型の予備校の指導*4にあきたない場合や、処分違憲等旧来型の審査基準論で書きにくい箇所の書き方を模索している場合には、憲法ガールで、判例理論を踏まえた審査基準論の論じ方を学ぶことは、合格への近道である。


4.Web版「憲法ガール」を読めば十分? とんでもない!
 確かに、大島先生が書かれた「原型」である、「憲法ガール」はネット上に5月19日まで公開されてきており、私のように、公開中に全てダウンロードしておいた人は少なくないだろう。しかし、本書は何倍、いや、何十倍にもレベルアップしており、「原作」とそれを基にした「アニメ」の関係くらいの違いがあるといっても過言ではなかろう。


(1)推薦文
 本書の推薦者は、あの有名な宍戸常寿先生と、伊藤真先生である。
 宍戸先生は、「憲法解釈論の応用と展開」

憲法 解釈論の応用と展開 (法セミ LAW CLASS シリーズ )

憲法 解釈論の応用と展開 (法セミ LAW CLASS シリーズ )

を著された東京大学准教授でいらっしゃり、「憲法解釈論の応用と展開」は、新時代の司法試験憲法の方向性を決定づける一冊である。
2010年代司法試験の「憲法」の方向性を決定付ける一冊!〜「憲法解釈論の応用と展開」 - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常
 その宍戸先生が、まさに「宍戸先生らしい」推薦文を書かれている訳である。
 更に、あの有名な、伊藤塾の塾長をされており、司法試験憲法の指導の第一人者である伊藤真先生も推薦されているのだ。


 この2人の推薦文だけでも、大きな価値があるといえよう。



(2)書き下ろし解答例がついている!
 これまでの司法試験過去問の「解答例」は、概ね、予備校が書くか、一部の学者が書いたものくらいしかなかった*5。しかし、予備校の答案には不満がある受験生も多いのではないか。また、学者の先生方も受験指導への懸念から、解答を示すことについて少し抵抗を示している様に思われる。いわゆる学者の解答例が掲載されているものとしては、ロースクール憲法総合演習*6日本評論社の「新司法試験の問題と解説」がある。ただ、前者には「自説の結論は*7違憲と決め打ちせよ*8!」等疑問な指導も少なくない。また、後者は、「出題趣旨」も「採点実感」も発表されていない時期に出版されており、出題趣旨や採点実感が公表された後になって振り返ると、司法試験委員の想定と異なった解答例も少なくない*9。 そんな中、日頃から憲法を活用されている実務家の大島先生が書かれた解答例は、「出題趣旨」と「採点実感」に準拠し、実務の観点が詰まっているものであり、非常に参考になる


(3)第0話がついている!
第0話は、旧試験の問題を題材にした書き下ろしであるが、なんと、今年の本試験と近い問題(論点的中)であり、あと数ヶ月発売が早ければ、これだけでも伝説になっていた可能性のある一作である。


 第0話では、具体的な「ダメ答案」と「いい答案」の実例が比較されている。このダメ答案が、「普通のロースクール生が書きそう」ないい例になっていて、それを徹底的に叩くところから始まっている。これけでも2500円の価値はあるのではないだろうか*10


(4)参考文献が脚注で詳しくついている!
 Web版と書籍版で学問的価値が大きく違うのは、脚注の有無といえよう。小説を楽しむだけなら、脚注なんか不要である。しかし、これを元に憲法学を学ぶなら、登場人物の各発言の意図と背景を脚注によって理解するということが重要であろう。更に深く知りたい場合には、脚注から憲法学の世界に羽ばたくことができる*11


 一般的基本書、いわゆる学者の過去問解説から、最新の論文まで。憲法だけではなく、行政法・情報法の論文が参照されており、SPEECH AND SILENCE IN AMERICCN LAWまで引用されているところには感服した*12


(5)なんと、かなり話を変えている!
もちろん、大筋の恋愛ストーリーは同じだが、「解説」に該当する部分の説明はかなり変えている。間違いなく内容は「深化」しており、ウェブ版よりもずっと情報価値が高い。
例えば、Web版憲法ガールの第4話(平成22年その2)では

そう。選挙権の権利重大性から選挙権制限の原則禁止・例外の許容要件を導くわけ。法的思考の基本である<原則・例外図式>がここで用いられているのが分かるかしら。選挙権の権利重大性から<原則・例外図式>を導くのが重要だから、選挙権の問題に安易に三段階審査論を適用することは 生存権と同様できないのよね。選挙権制限禁止の<原則>を打ち立てる、その論証こそが肝になるのよ。また選挙権の法的性格に関する一元説・二元説から 立法裁量の広狭を論じたり、選挙権は精神的自由であり自己実現・自己統治に資するというような一般論を説くのは不適切であることは、この判例からも分かるわね。


とされていたのが、本書では


そう。選挙権という重要な権利の行使の機会に対して重大な制限がなされていることから、選挙権制限の原則禁止・例外の許容要件を導くわけ。ここでも<原則/例外>図式が用いられているのが分かるかしら。在外邦人選挙権制限違憲訴訟は在外邦人の選挙権行使の機会を制度的に排除していた事件だったわけだから、ホームレスの選挙権行使を『住所』要件によって事実上困難にしているに過ぎない本件まで判例の射程が及ぶかは考えておかなくちゃいけないけど、精神的原因による投票困難者選挙権制限事件が在外邦人選挙権制限違憲訴訟の射程を選挙権行使の機会の事実上の制限が問題となった事案にまで拡張しているのを思い出せると、なお良いわね*13

となっており、これだけでも本書の議論がWeb版より深化していることが分かるだろう。


(6)イラストが入っている!
 Web版愛好者の方にはトウコちゃんがいったいどういう顔をしているのか、興味津々の方も多いだろう。いわゆる「萌え系」ではなく、落ち着いた絵柄のイラストになっているが、このイラストのテイストは、学術的価値の高い本書に相応しいと言えるのではないだろうか。
 裏表紙の絵もなかなかいい味を出している。


 更に、混浴温泉をテーマにした第8話(平成20年その2)にも挿絵が入っている*14ところは、一部のファンには垂涎ものだろう。


(7)レミ先生のワンポイントアドバイスがついている
 これまで違憲審査基準で司法試験の論文を書こうとして勉強をして来た人にとって、Web版の憲法ガールは、突然三段階審査の世界に飛び込んだ感じで、馴染むのに時間がかかった方もいらっしゃるかもしれない。
 本書の「レミ先生のワンポイントアドバイスの意義は、三段階審査を知らない受験生が、本書の記述を理解できるよう「架橋」することである。まだ三段階審査がよくわかっていない読者は、第0話とレミ先生のワンポイントアドバイスを読む事で、本書における「僕」と女性陣の世界に旅立つ準備ができるだろう。



(8)参考判例がまとめられている
 更に、書籍版の良い所は、巻末に、「判例一覧」という形で参考判例がまとまっているところである。もちろん、これで百選等を代替することはできないが、本書で紹介している判例・裁判例については公刊物未登載の裁判例を含み、丁寧にその裁判例のポイントを拾っており、わざわざ百選等を参照しなくとも、本書の1冊だけで関連する判例がどういうことを言っていたのか把握できるのは素晴らしい。

まとめ
 「憲法ガール」の書籍化は、新司法試験受験業界に大きなインパクトを与えることは間違いない。
 三段階審査の人はもちろん、違憲審査基準で書いていた人も、本書を用いることで、平成26年の憲法をよりうまく書けるようになるだろう。
 既にWeb版憲法ガールをダウンロードされた方も、8つものメジャーな変化がある書籍版憲法ガールは「買い」であることは間違いない
 過去問対策の重要性は、既に商法ガールシリーズでも何度も力説していたところであるが、過去問から、実践的な憲法の学力を養成してくれる本書は、新時代の新司憲法対策書の決定版と言えるだろう。

*1:例えば山本龍彦「三段階審査・制度準拠審査の可能性」法時82巻10号103頁

*2:少なくとも、2つを一緒に考えていた

*3:51頁

*4:最近の予備校では新しい指導を始める志を持った予備校講師の先生も増えて来ているそうですが

*5:あとは再現答案

*6:

ロースクール憲法総合演習―「基礎」から「合格」までステップ・アップ

ロースクール憲法総合演習―「基礎」から「合格」までステップ・アップ

*7:表現の自由なら

*8:263頁

*9:逆に言うと、いくら専門家がいろいろな資料を参照しても、司法試験委員の出題意図を読んだ的確な解答を書くのは至難の業であり、ましてや受験生はそんなに高いものが求められていないという安心材料と理解すべきだろう

*10:なお、ここで出てくるレミ先生が、コスプレ好きの若い法学研究者という設定で、なかなかいい味を出している。

*11:なお、司法試験受験生がそれをすべきかというのは時間との関係で疑問がないではない。

*12:176頁

*13:58頁

*14:117頁

日本の政治問題に対しても示唆的? 〜「Republic, Lost(仮訳:失われた共和国)」

Republic, Lost

Republic, Lost

1.リア充ネタを楽しんでいただけのはずだった?
4月のある日、ツイッターでは、「リア充法制審議会」というネタが話題になっていた。要するに、リア充を法律で規制するとすれば、どうなるのだろう?」という方向性で大喜利をやっていたのである。
【政策】リア充法制審議会でありがちなこと【大喜利】 - Togetter
最初は、単なる冗談だったが、日本の立法制度の現状に対する問題意識が話題になり、その文脈で 一冊の積読本」の名前を出した。これが、「Republic, Lost(仮訳:失われた共和国)」である。
そうしたところ、@inflorescenciaさんと@satoshinr先生に書評を書くようにと勧められ、いわば「おだてられた豚」として、「木登り」をすることになった次第である。そもそも、英語は苦手な方であり、また、英米法はさっぱりであり、
というのは、当時の私の本音である。


2.どういう本なのか
本書の著者は、ローレンス・レッシグ教授である。憲法学者・インターネット法/知財法学者だが、たぶん日本では、インターネット法/知財法学者の側面が紹介されることが多いと思われる。クリエイティブ・コモンズの創設*1や、インターネットの規制手段の4類型*2という枠組等、レッシグ教授のインターネット法/知財法に関する理論の学問的な影響や実務的な影響は、アメリカのみならず、日本においても大きい。
しかし、少なくとも初期は、統治に関する論文を積極的に書かれる、憲法学者でもあった。そして、著作がインターネット法や知財にやや偏っていた時期を経て、最近再度著された憲法学(統治機構)に関する主要な著作が、本書なのである。

さて、タイトルからすると、本書は、「Republic(共和国)」に関するものである。そして、それが「Lost(失われた)」というのである。本書によれば、共和国とは、その政治が有権者のみに依存する政体*3をいう。これが失われたというのは、要するに、政治が有権者以外*4に依存しているように見え、そして、有権者がそれにより政治に対する信頼を失ったことを指す。

本書は、極わずかな少数の富裕層による政治資金によって、政治過程が歪曲していると主張し、これを「腐敗」であると批判しているのだ。


3.各章の構成
本書は21章構成になっており、4つのパートに分かれている。
パート1は、病の性質と題して、問題点への導入を図る。
第1章で提示されるのは、依存という概念である。ある医学部の教授は、ある治療方法を生徒に教えている。その治療のためにはいくつかの種類の薬を使える。ある製薬会社は、その教授に、講演会でスピーカーを務めてくれと依頼する。定期的に仕事が来るし、支払いもいい。教授はその収入に依存するようにあなる。製薬会社は、教授がどの薬を使うよう薦めているのか知っている。お互い何らかの約束している訳ではない。著者は、このような状況を、依存の1つのカテゴリーとして取り上げる*5。講演によって得る「金銭」と「教授が推薦する薬」の間に因果関係があるとまでは言わない。しかし、教授の行う推薦の客観性が下がりますよね、ということである。この類の依存による腐敗を著者は、依存性腐敗(dependence corruption)と名づけた*6
著者は、アメリ憲法第1編第8節第9項*7を引く。

合衆国は、貴族の称号を与えてはならない。合衆国から報酬を受け、またはその信任を受けて官職にある者は、連邦議会の同意を得ることなく、国王、公侯または他の国から、いかなる種類の贈与、俸給、官職または称号をも受けてはならない。

起草者が恐れていたのは、このような依存性腐敗がアメリカで生じることであった*8

第2章では、研究結果とそれに対する資金提供に関する2つの例が挙げられる。乳児用の「おしゃぶり」に使われる科学物質の安全性、携帯電話の身体への影響。数百の研究をその研究のための資金源(どこの研究助成を受けているか)によって分類すると、どれも、業界によって資金援助された研究と、業界と無関係の資金源の場合の研究では、その結論がきれいに分かれる*9。ここでも、この2つの間に因果関係があるというのではなく、そこに、「公平性が疑われる」関係があるという指摘である。そして、この公平性が疑われる関係というのは、裁判官であれば忌避事由に該当する。市民の司法制度への信頼を害するからだ*10
第3章では、著者の立場が明確にされる。著者は別に政府を魔物が裏で操っているとか、議員たちが不真面目で怠け者だというつもりはない。著者が問題にしているのは、民主主義の屋台骨を揺るがすやり方で、善人(である議員)が依存してしまっていること、そして、善人(である有権者)が、その依存の姿を見て最悪の事態が起こっているとみなしているということである*11


パート2は、具体例について語る。
第4章は、「自由な市場」に関し、農業、特に砂糖やトウモロコシへの補助金や保護的関税がどれだけ「悪い政策」であるかを語り、その上で、砂糖業界やトウモロコシ業界が大量の政治資金を流し込んでいることを示す。悪い政策と、政治資金、この2つの事実は、どうしてその政策になっているのかに関する読者の判断力に影響を与えるだろうか*12
第5章は、「効率的な市場」に関し、環境問題も著作権問題も、どちらも、外部性の問題であるところ、著作権問題では迅速に法改正が行われるのに、環境問題では、行われないことを示す。その上で、環境問題では現状維持派の政治資金が、改革派よりも圧倒的に多いのに対し、著作権問題では、法改正を目指す既得権益からの政治資金が、反対派よりも圧倒的に多いことを示す。悪い政策と、政治資金、この2つの事実は、どうしてその政策になっているのかに関する読者の判断力に影響を与えるだろうか*13
第6章は、「教育問題」に関し、教育問題、特に、一定の教師に終身雇用が適用され、無能教師の首を切れないことがどれだけ「悪い政策」であるかを語り、その上で、教師組合が大量の政治資金を流し込んでいることを示す。悪い政策と、政治資金、この2つの事実は、どうしてその政策になっているのかに関する読者の判断力に影響を与えるだろうか*14
第7章は、「金融システム」に関し、金融政策について現在の政策がどれだけ「悪い政策」であるかを語り、その上で、金融業界が大量の政治資金を流し込んでいることを示す。悪い政策と、政治資金、この2つの事実は、どうしてその政策になっているのかに関する読者の判断力に影響を与えるだろうか*15
第8章では、これらの具体例のまとめとして、アメリカ人の75%は、政治資金が議会の(投票)結果に影響を与えていると信じており、それは、共和党支持者でも民主党支持者でも同じように高率だという調査結果を引く。われわれ有権者は、単に誤解しているだけなのだろうか?*16


パート3は、本書のうちのまさに本論というべき部分である。
第9章は、「政治とカネ」が問題となった経緯を語る。(民主党の)ジョンソン大統領による公民権確立により、民主党の長年の優位が揺らいだ*17。そのため、いつ民主党が勝っても、共和党が勝ってもおかしくない政治状況が生じた。その結果、現代的な「政治資金集めをする議会」が誕生した訳だ。政治資金依存の状況において、ロビイスト達が政治資金の出し手と政治家の間にうまく入り込んだ。そこにあるのは、交換経済ではなく、贈与経済である。つまり、直接的な政策と引き換えの資金提供(賄賂)は例外的であり、そこにあるのは、具体的な政策実現と紐付けられていない政治資金の提供(贈与)により、徐々に公衆のための使命を忘れ、政治資金の出し手への忠誠心を高めていく政治家の姿である*18。そして、元議員は、議員時代の人脈を生かしてロビイストとなり、システムは再生産を繰り返す*19
第10章は、再び憲法の条文が出てくる*20。起草者の考える共和制という政体が、その政治が有権者のみに依存する政体*21をいうとした上で、憲法の様々な条項がこの目的を実現するためにあると指摘する。
その上で、実は政治資金が政策に影響を与えているという確実な因果関係を示す資料は少ない、ないしは、確実な因果関係があると実証はされていないと指摘する*22
実証研究によって因果関係が証明されていなくても、なお、この問題は喫緊の対処すべき問題である*23。その理由は、資金集めのために議員が忙殺され、委員会や本会議等に集中できないこと*24、貧富の差が開く中、一般の有権者の問題関心と、利益団体の問題関心が異なっていること*25、多くの有権者が政治への信頼を失っていること*26である。
第11章、第12章は、改革の声が政治資金によって潰される姿を描いている。著者はオバマ大統領の支援者であったが、オバマ大統領が公約した政治システムの変革はなされず、たとえば、医療保険改革で、いかに製薬業界が「焼け太り」したか*27や、単純な税制への試みがなぜ失敗するか*28が描写される。
第13章では、「政治資金を集めるためにまたお金がかかる」という統括政治資金団体の実態や、議会職員がロビイストになる姿等を描き出す。
第14章では、2種類の腐敗として、人が腐敗というとすぐに思い浮かぶ賄賂はあくまでも腐敗の1つのカテゴリーに過ぎず、依存性腐敗という問題があるとする。ここでは、近年の政治に関する最重要憲法判例であるCitizens United v. FEC(2010)について議論がなされる*29日本でいうところの八幡製鉄事件のアメリカ版とまで単純化すると専門家の方に怒られてしまうだろうが、要するに最高裁は、企業献金規正法を修正1条(表現の自由)違反としたのである*30。いまや、アメリカ人で議会を信頼している人は11%に過ぎない*31


最後のパート4は、解決策ということで、著者の提案が示される。
第15章は、政治資金を透明化しても、それでは不十分であり、また、実務的には寄付の匿名化も不十分だとする。
第16章では、フランクリン・プロジェクトを取り上げる *32。要するに、有権者は最低50ドルを税金として納めているだろうから、この50ドルについて有権者それぞれが自分の支持する政治家に行くように指定できるようにする、そのお金をもらいたければ、政治家は、一人の支持者から(50ドル以外に)100ドル以下しか受け取ってはいけないというものである。
第17章では、1つ目の解決策が提示される。通常通り政治資金等に関する改革を行う法律が両院で通過し、大統領が署名すればいい。しかし、これには著者自身懐疑的である*33
第18章では、2つ目の解決策が提示される。例えば、選挙を市民の手に取り戻そうと訴える素人が、議員選挙で10%の得票を得れば、それはニュース価値が高い出来事だろう。憲法上同じ州内の複数の選挙区に出馬できることから、素人が、選挙を市民の手に取り戻すことに消極的な現職のいる選挙区に出馬し、大量得票を得るという「平和的テロ」は改革を引き起こせる可能性がある。この手法の成功率について、本書は楽観的に見て5%だとする*34
第18章では、3つ目の解決策が提示される。それは、政治資金への依存からの脱却を訴える大統領が当選し、大統領の権力を使って改革を行うというものである。改革法が通ったら、その時点で辞任する*35。実際に、レーマー元ルイジアナ州知事は、2012年の大統領戦において改革の実現を訴えたが、泡沫候補扱いされて終わった。その理由は、まさに、レーマー元州知事が、100ドル以下の寄付しかもらわないと主張し、それが勝てるわけがないとの評判を招いたからである*36。この手法の成功率について、本書は楽観的に見て2%だとする*37
第19章では、4つ目の解決策が提示される。この案は、まさに憲法学者らしいもので、長年使われていなかった、3分の2の州の請求による憲法改正会議(constitutional convention*38)を開催するという条項を使うというものである。通常は、連邦議会憲法改正を発議しており、憲法制定会議は最初の憲法制定の際に行われたきりである。しかし、憲法改正会議こそが、(「腐敗」した)連邦議会のイニシアチブを回避して、憲法を改正できる迂回路である。この手法の成功率について、本書は最低でも10%はあるとする*39
第20章は、これら4つの中のどの解決策を追求すべきかというと、これまでにない後3者の方に優越性があるとする。それは、アメリカの政治は、前例がないこれらの政治プロセスに対する対応の準備ができていないからである。もちろん、それでも確率が低いことは事実である。このような成功の確率が低いことをやろうというのは不合理かもしれない。しかし、わが子に対する不合理性を人は賞賛するではないか。国に対する場合と何が違うのか*40。これが、著者の主張である。


4.本書の意義
本書は、以下のとおり、非常に重要な意義を有する。
第1に、アメリカの憲法統治機構)および政治に関する知見がないと、本書を理解することが難しい、逆にいうと、本書を理解する中で、憲法と政治に関する理解も深まるということである。
たとえば、日本では、政党交付金制度と政治資金規正法が合憲と解されているが、アメリカの憲法感覚は大分日本とは違うようである。たとえば、上述のフランクリンプロジェクトについて、様々な細かな規定を説明しており、その中でも、自分の信じない表現(嫌いな政治家)を助けるために有権者個人のお金が使われないようにすること*41が重要だとされているが、この観点からは、有権者から集めた税金について、それぞれの有権者の指示する人ではなく、議員数および得票数に基づいて交付する、日本の政党交付金は大丈夫なのだろうか政治資金規正法はCitizens United判例から見ると大丈夫なのか等、日米の憲法感覚の違いを顕在化させてくれる



第2に、本書の指摘する 「政治とカネ」とそれによる国民の政治不信の問題は、日本でも同じように社会問題化している。もちろん、アメリカと日本では、政治システムが違う*42以上、ここで議論されている内容はそのまま日本の政治状況にあてはまる訳ではないし、解決策も日本でそのまま使える方法ではないものも多いだろう。しかし、本書の切り口である「賄賂とは異なる意味での『腐敗』」とか、「金と政策の因果関係ではなく、この2つに関係があると有権者が疑って政治への信頼を失うことの問題」等は、分析の観点として、日本でも有益なように思われる。


第3に、レッシグ教授、および教授が現在行っている運動への理解を助ける。教授は、単なる象牙の塔の人間ではなく、クリエイティブ・コモンズ運動等、社会運動を担ってきた。最近の運動としては、Change Congress(仮訳:国会を改革せよ)、Rootstrikers(仮訳:諸悪の根源を叩く者達)、憲法改正会議運動等が挙げられる。本書第5章でも著作権について言及があるが*43著作権等のインターネットや知財法に関する活動をする中で、教授が議会に問題があることに気づき、関心が知的財産権から政治腐敗に移った。まさに本書は、教授のこの関心の変化を示す書といえ、後々、 「この本を執筆した頃にターニングポイントがあった」と言われるであろう本といっていいだろう。


5.本書への疑問
もっとも、もちろん本書には疑問がなくもない。
まず1点目は、「今実現されている政策は、本当に『悪い政策』なのか?」という点である。本書の前提は、悪い政策が実際に行われているところ、その悪い政策の受益者が多くの政治資金を出しているという部分であり、悪い政策だからこそ、国民の信頼が失われる。しかし、例えば、第6章で批判されている教育政策について言えば、私の知り合いで、アメリカの大学院で教育学を学んでいる人に聞いてみたところ、上司ないし管理職が教師に不当な介入をすることがあり、実際に、アトランタで教育長らが、教師に統一テストの成績を上げるよう強いプレッシャーを掛け、集団的な成績改ざんが起こった事件等もあったらしい。
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/world/america/642396/
知り合いによれば、アメリカの教育学においても、教師がこのような介入から独立して子どものためになる教育をするためには、終身雇用は重要であるという考えが有力であるということである。
もちろん、私は、どちらの考えが正しいのかを論評する立場にはないが、第4章から第7章の例について本当に「悪い政策」が実現されているのかという点は検討の余地があろう*44


2点目は、上記の第9章の「政権交代が現実的に可能になったから政治資金が必要になった」という議論の直後に、(政治資金を集めるために、極端な主張をする傾向が生じてきたという文脈で、)「安全な議席つまり、落選のおそれのない選挙区が多いという議論がされている。

(略)少なくとも、下院における85%の選挙区が安全な議席であり続けた。(at least 85 percent of the districts in the House remained safe seats)
ローレンス・レッシグ「Republic, Lost仮訳:失われた共和国」97頁

この2つの議論は、一応、「安全でない15%の選挙区の結果で党としての勝敗が変わるから、すべての選挙区で政治資金を集めないといけないが、85%の選挙区では負けることはないので、一見選挙区民に嫌われそうな極端な主張をすることが(政治資金を得る上では有効なので)頻繁に見られるようになった」という形で、相互に矛盾しないように考えることもできるのだろうが、やや方向性が逆を向いている気もしており、個人的には違和感が残るところである。


3点目は、そもそもの政治観であり、例えば、長谷部教授は、政治は、魑魅魍魎である利益団体がその利益を実現しようと蠢く世界という割り切りをされる。いわゆる経済的自由権に関する消極目的と積極目的の審査基準の違いで、なぜ積極目的について裁判所が審査を謙抑的に行うべきだが、消極目的について審査を積極的に行うべきかといえば、積極目的というのは、まさにその利益団体の主張が「建前」レベルで表明されているということであり、その上で国会がこれを通した以上、裁判所はそれを尊重しましょう、しかし、消極目的というのは、「世の中の人々のため」ということだが、本当に世の中の人々のためなのか、本当は単に一定の利益集団の利益を実現するためだけれども、それをうまくカモフラージュして、国会を通しやすくしたのではないかという問題があるから、裁判所がきちんと審査するべきだという議論である*45このような政治観を推し進めれば、著者が問題とする、「政治が国民のみに依存しておらず、利益集団に依存すること」というのは、「それ自体を変革すべき」という話よりも、それが政治の現実なのだから、裁判所の違憲立法審査のレベルでこのような現実を踏まえた審査基準の使い分けをすることの方が重要ということになるのかもしれない。


いずれにせよ、これらの疑問は、私の英語力の問題による可能性が高い。私は基本的には、洋書の段階では読まず、和訳されるのを待って読むというのが通常の読書行動である。その意味で、誤読等があれば、皆様にご指摘いただきたい。

まとめ
ローレンス・レッシグ「Republic, Lost(仮訳:失われた共和国)」は、アメリ憲法および政治を理解するのに有益でり、日本の「政治とカネ」の問題等にも応用し得る考えを示す等、重要性が高い。この重要性に鑑みると、ぜひ早急に日本語訳を出版していただきたい
 私の英語力のせいで十分に理解できなかった部分はあるものの、邦訳が出た折には、もう一度読み直し、レッシグ教授の真意を汲み取って再度レビューをしてみたいと思っているところである。

*1:http://creativecommons.jp/;title

*2:http://www.iii.u-tokyo.ac.jp/blog/media/7/20111019-81_5.pdf参照。

*3:128頁

*4:具体的には、政治資金の出し手である一部の富裕層。

*5:本書15、16頁

*6:本書17頁

*7:この記載方法は、樋口範雄「アメリ憲法」12頁による

*8:18頁

*9:21〜28頁

*10:30頁

*11:39頁

*12:52頁

*13:60頁

*14:66頁

*15:85頁

*16:88頁

*17:公民権確立の演説前、止めに入る側近に「大統領の任務は何だ?」と言ったというエピソードは印象深い。93頁

*18:110頁

*19:123頁

*20:129頁以下

*21:128頁

*22:Stephen Ansolabehereの研究等、134頁以下

*23:138頁

*24:138頁以下

*25:142頁以下

*26:166頁以下

*27:178頁以下

*28:199頁以下

*29:238頁以下

*30:238頁

*31:247頁

*32:265頁

*33:274頁

*34:279頁

*35:288頁

*36:283頁

*37:289頁

*38:第5編、なお、制定時のConstitutional Conventionは憲法制定会議が定訳と思われるが、今回問題としているのは、改正のための会議convention for proposing amendmentsなので、憲法改正会議とした。

*39:304頁

*40:306頁

*41:267頁、つまり、自分が出し手となっている50ドル分の配分は自分が決められること

*42:日本において、自国の政治体制を示す意味で「共和国」「共和制」といった言葉がほとんど使わないのは1つの例であろう。

*43:ただ、本書全体で見るとあまり著作権の例を挙げていない

*44:なお、教授の立場からすると、問題は、「有権者が『悪い政策』と思うか」であり、「本当に悪い政策かどうかは問題ではない」という反論がされる可能性がある

*45:かなり乱暴に要約してしまいました。

これまであまりなかった「企業法務のフレームワーク」本〜スキルアップのための企業法務のセオリー

スキルアップのための 企業法務のセオリー (ビジネスセオリー 1)

スキルアップのための 企業法務のセオリー (ビジネスセオリー 1)

1.これまでの企業法務本になかったもの
 これまでの企業法務本は、主に「企業法務で行う様々な業務について、それぞれどういう法的根拠があり、企業法務部員としてどう対応するのか」を説明するものであった。


 契約書チェックであれば、契約書の類型毎に、問題となる条項、各条項をどう修正すべきかといった説明をしてくれる本は既にあるし、株主総会でも、各シーン毎にどのような条項が問題となり、実務上どう対応すべきかを説明する本は既にある。入門書的な位置づけの本では、多くは、様々な分野*1について、各分野で重要な事項をピックアップして説明しているものが多い。このような方針の本は重要であり、必要である。


しかし、例えば、新人法務部員が企業法務に取り組むためのフレームワークを自分の中に形成するという意味では、そういうニーズに応えるものはなかった。
速習!企業法務入門 1.総論〜新人法務部員のために - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常
という記事を昔書いたのも、そういうフレームワークを自分なりに模索したというものであった。


瀧川英雄「スキルアップのための企業法務のセオリー〜実務の基礎とルールを学ぶ」は、元オムロン法務部門の責任者で、現在大手メーカーの法務室ジェネラルマネージャーを務めていらっしゃる瀧川先生が著した、このような、ありそうでなかった企業法務のフレームワークを身につけさせてくれる本である。


2.フレームワークで分かる法務
「はじめに」には、新人法務部員の悩みが綺麗に描きだれている

経験の浅い法務担当者が一様に悩んでいるのは、
「社内の事業部門のスタッフからの法務相談では、何を聞き出せばよいのか?」
「契約書審査で問題を絞り込めず、何もかも調べる羽目になっている」
「調査を依頼した顧問弁護士から、期待した内容のレポートが上がってこなかった。どう対処すべきだろう?」
瀧川英雄「スキルアップのための企業法務のセオリー〜実務の基礎とルールを学ぶ」3頁

それはまさに法務業務の方法論に関するものであって、法律の知識を深めたり、契約書の知識を深めて対応できるものではない*2。この問題意識から、本書はどうすれば法務業務を進められるようになるのか、フレームワークを提供してくれる。


まず、第一部は法務担当者の心構えである。これを、フレームワークで説明してくれる。例えば、企業法務のスキルであれば、インプット、インターフェース、アウトプット、CPUという4つの枠組みに分けて説明する*3、会社を知る・人を知る・答えを知る(答えを出す)*4で説明する。


第二部は、多くの法務部員が無意識にやっている、個別案件の流れ図*5、契約書レビュープロセス*6、ビジネス文書の組み立て*7、法務回答文書の書き方*8、契約交渉の準備*9等を流れ図や箇条書き等の形で示し、枠組みを理解させてくれる。これは、新人法務部員にとってありがたい企画である。


例えば、契約書レビュープロセスであれば、第1から第4までの4フェーズがあるとした上で、第1フェーズは案件の把握とビジュアライズであるとして、すぐに契約条項に飛びつくことを戒め、「どんな仕事になるのか?」「どれくらい手間がかあるのか?」等について仮説を持ち、取引内容を視覚的にイメージすることの大切さを論じる*10。そして、第2フェーズとして、問題点の抽出と解決*11があるとして、第1フェーズで作成したビジュアライズされた取引内容、過去の経験のデータベース、参考契約・過去事例等から「あるべき状態」との照合を行い、乖離について対応を検討する。ここまでできたら、第3フェーズで契約書をパソコンで修正する*12。そして、第4フェーズとして依頼者に回答する*13という枠組みに従いどう進めて行くのかが解説されていく。


更に、第3部では、売買契約、開発委託契約、システム開発契約、品質クレーム紛争、訴訟、総会、国際法を例にとって、具体的なフレームワークが示される。
例えば、品質クレーム紛争では、紛争解決の基本フレームワークとして、ゲームのルールを理解し、基本方針・目標を設定し、事実関係・法律上の位置づけを確認し、勝算を評価しながら基本方針や目標を修正し、具体的打ち手や目指すべき着地点を決定し、打ち手を実行するというものがあるとした上で*14、品質クレームの例をとって説明する。
例えば、株主総会であれば、一番下が会社法、次が定款、更に金融商品取引法、そして証券取引所規則、更に機関投資家の議決権行使ガイドラインがあるという五階建て構造のフレームワークが示され*15、それに従った解説がされる。
例えば、訴訟であれば、紛争解決ゲームの1つとして、被告の問題行動があり、原告が損害を被り、2つの間に因果関係があるといえれば原告が勝てる*16というフレームワークを示し、原告はこの3つが存在してつながっているというストーリー作りをし、被告はいずれかを否定するストーリー作りをするということになると説明される。


3.暗黙知形式知にする機能
本書の機能は、このようなフレームワークを図表や箇条書きで明示することにより、多くの法務経験者が、心の中では分かっていたがなかなかうまく言語化できなかった暗黙知形式知にする機能があるといえるだろう。
多分、法務を5年、10年と経験して行くうちに、本書に書いている内容は当たり前のものとして身についていくのだろう。しかし、新人法務部員にとっては、その「当たり前」が分からず、最初は暗中模索状態になる。その時に、本書のようなフレームワークを押さえると、それぞれの局面における法務の行動の意味が理解でき、事前に次に何をすべきかを見据えた対応ができるようになるだろう。その意味で、本書は、新人法務部員にぜひオススメしたい本である。


とはいえ、本書単独で用が足りるという性質のものではない。本書はフレームワークは解説しているが、それ以外の、例えば契約書の個別具体的な条項の修正の仕方についてはほとんど解説されていない。つまり、旧来型の企業法務本と併用して使うべき本であって、この1冊で他の本が要らなくなるという性質ではないことに留意が必要である。

まとめ
瀧川英雄「スキルアップのための企業法務のセオリー〜実務の基礎とルールを学ぶ」は、類書にない、法務業務の進め方のフレームワークを提供してくれる本である。
新人法務部員にとっては、本書を読み、フレームワークを提供することは、業務上の悩みの解決になるはずであり、お勧めできる。
ただ、本書だけで事足れりとするのではなく、昔ながらの契約書や法律について知識を深めるための本も併用する必要があるだろう。

*1:契約書チェック、総会対応等の「機能」で切るものもあれば、「会社法」「独占禁止法」といった「法律」で分けるものもあるが、本質は同じ

*2:瀧川英雄「スキルアップのための企業法務のセオリー〜実務の基礎とルールを学ぶ」3頁

*3:瀧川英雄「スキルアップのための企業法務のセオリー〜実務の基礎とルールを学ぶ」20頁

*4:瀧川英雄「スキルアップのための企業法務のセオリー〜実務の基礎とルールを学ぶ」31頁以下

*5:瀧川英雄「スキルアップのための企業法務のセオリー〜実務の基礎とルールを学ぶ」39頁

*6:瀧川英雄「スキルアップのための企業法務のセオリー〜実務の基礎とルールを学ぶ」55頁

*7:瀧川英雄「スキルアップのための企業法務のセオリー〜実務の基礎とルールを学ぶ」76頁

*8:瀧川英雄「スキルアップのための企業法務のセオリー〜実務の基礎とルールを学ぶ」85頁

*9:瀧川英雄「スキルアップのための企業法務のセオリー〜実務の基礎とルールを学ぶ」127頁

*10:瀧川英雄「スキルアップのための企業法務のセオリー〜実務の基礎とルールを学ぶ」56頁

*11:瀧川英雄「スキルアップのための企業法務のセオリー〜実務の基礎とルールを学ぶ」58頁

*12:瀧川英雄「スキルアップのための企業法務のセオリー〜実務の基礎とルールを学ぶ」62頁

*13:瀧川英雄「スキルアップのための企業法務のセオリー〜実務の基礎とルールを学ぶ」63頁

*14:瀧川英雄「スキルアップのための企業法務のセオリー〜実務の基礎とルールを学ぶ」192頁、なお、本書では図示されており、言葉で示すより分かり易い

*15:瀧川英雄「スキルアップのための企業法務のセオリー〜実務の基礎とルールを学ぶ」213頁

*16:瀧川英雄「スキルアップのための企業法務のセオリー〜実務の基礎とルールを学ぶ」202頁

M&Aの「総合力」をアップさせてくれるM&A関係者の必読書〜「企業内プロフェッショナルのためのM&Aの技術」

企業内プロフェッショナルのためのM&Aの技術

企業内プロフェッショナルのためのM&Aの技術

1.はじめに
私は「M&A支援部」といったM&A専門部門にいたことはないが、法務的な観点から複数のM&A案件(含クロスボーダー)に携わらせていただく中、必要に迫られていろいろな本を読んで勉強して来た。私は、もう古くなっているが北地・北爪「M&A入門」
M&A入門 (日経文庫)

M&A入門 (日経文庫)

から入って、法務系実務知識を知るために
M&Aの契約実務

M&Aの契約実務

実践TOBハンドブック 改訂版

実践TOBハンドブック 改訂版

M&Aを成功に導く法務デューデリジェンスの実務

M&Aを成功に導く法務デューデリジェンスの実務

といった辺りの本を読んで後は実務に従事しながら、会計系・経営系も含め濫読したという感じである。濫読する中で分かったのは、法律的アプローチ、会計的アプローチ、経営的アプローチ等いろいろなアプローチからの本があり、それぞれ興味深いものもあったが、「視野」がその著者の専門分野に限られているものが多い印象であり、1つの方向に向かって深い考察をしてくれるものの、「M&Aに携わる実務家として、それらを総合的にみた場合にどのように考えて案件を進行させていくべきか」というアプローチを取る本はそもそも少なく、あっても入門書的なものに留まっていた。つまり、M&Aの「総合力」をアップさせて欲しいという実務家の問題意識に答えてくれる本がなかなかなかったのである。



本書をアマゾンで見かけた際、「企業内プロフェッショナルのための」という副題が目を引いた。著者は、日産前M&A支援部長で中央大学大学院の先生をされている四方藤治先生*1である。M&Aの現場にいる筆者が単なるM&A技術ではなく、企業内でM&Aの「プロフェッショナル」になるために必要なものを教えてくれる本、これは楽しみだということで、本書をポチった。



2.「はじめに」でファンに
 これは、私だけなのかもしれないが、M&A実務に携わることになってからずっと思っていたのはM&AのためのM&Aって成功しないよねってことであった。M&A自体が自己目的になっている」ということの例を挙げるのは難しいが、仄聞したエピソードを1つ挙げると、かつてインターネット系の上場企業が、システム開発系上場企業の子会社を買った時、その意図をこう説明したという。


「おたくの会社の下だと、システム開発系企業ということで、PBRは2倍にしかならない。でも、うちの会社の下に入れば、インターネット系だからPBRが10倍になる。だから、同じ会社をおたくの会社からうちの会社の傘下に移すことで、企業価値を5倍にできる」


M&Aの実務に入門した頃に「こんな話もある」といった程度のニュアンスで聞いた話であり、数字はうろ覚えだし、時期も不明*2なので、そういうものとしてご理解頂きたいが、このようにM&A自体が自己目的になると、なかなかうまくいかないなぁというのが私が常々感じていたことであった。



 本書を読んで、2頁目でこの本と著者のファンになった。本書の「はじめに」の2頁目にはこういう記載があった。

事業法人(注:である日産自動車)が、M&A専門部署を設立することは当時まだ珍しく、他に参考になる事例も少なかったため、作業的にはまったく手探りからのスタートでした。(略)
ただ、業務の目的(ミッション)において
M&A活動自体は、日産自動車にとってのコア事業戦略の核心的機能になりえず、あくまでも策定された個々の事業戦略を実現する手段・方策」である
との枠組みは、当初より明確なコンセプトでした。
四方藤治「企業内プロフェッショナルのためのM&Aの技術」ii頁


あくまでも個々の事業戦略が先にあって、それを実現する手段がM&A。このようなコンセプトを明確に打ち出し、クロスボーダーを中心に200を超える案件をこなされてきた*3四方先生の本であれば、これについていけば間違いはないだろう。こう感じたのである。



3.「総合格闘技」としてのM&A
 四方先生は、M&A総合格闘技として捉えている。定型的・教科書的なルールに従った従来の格闘技のようなものではなく、個別具体的で事前に予見できない問題を広範な知識と経験に基づき、チームワークを活かして利害衝突を解消し勝利を導く点に特色があるということであろう*4



本書では、その総合力を高めるため、何のためM&Aをするのかという問題を提起し、M&A担当者の心得、効率的M&Aのための実務プロセス、企業価値、そしてコーポレーションガバナンスの関係と説明していく。



最初の問題意識が鋭い。M&Aの動機は、本当に「時間を買う」ためかという問題を提起され、時間を買うだけで長期的企業価値の向上にはつながらないのであり、「単に効率と効果を混同しているだけでは」と指摘される*5。また、シナジーについても、同じ人達が、これまでと同じように、同じ場所で、同じ事業や業務をやっても、全体の価値は増加しないはず*6と鋭い指摘をされ、

M&A提案の理由付けにシナジーが登場したら、要注意! 過度に収益シナジーに依存した、M&A提案は、より一層注意! 実現可能性についての検証が必要です。
四方藤治「企業内プロフェッショナルのためのM&Aの技術」38頁

シナジーとは、美しい響きの言葉ですが、その実質は曖昧模糊として抽象性に富んだ名称でしかないのです。実現過程が具体的な行動計画に分解されていないシナジーは、幻想に終わりやすいということです。
四方藤治「企業内プロフェッショナルのためのM&Aの技術」64頁

等として、事業のモジュール化等の方策を説明している。



実務プロセスについては、事業戦略を重視した上で、三次元グラフでM&Aの手法の最適選択を説明する*7、少数精鋭のチーミングの重要性を力説する*8、結果の評価が難しく「PDCAが回らない!」と悲鳴が出ている状況でどうすべきか*9、失敗率が高いので大技を狙わずに小技で細かくポイントを稼ぐ、つまり中小規模の案件を連続して成功させることに注力する*10等うなずかされるところが多い。

わからない事業はやらない
既存事業との関連性が低く、事業の収益基盤や競争条件が十分に理解できていない道の事業には手を出さない
四方藤治「企業内プロフェッショナルのためのM&Aの技術」79頁

には、「 そう、そうなんですよ!」と強くうなずいた。



また、守秘義務の関係でやや抽象性が高かったが、過去の7案件を通じた課題と教訓が説明され、その中には日産自動車が培って来た「ノウハウ」的なものも盛り込まれており、自動車業界の状況を念頭に置きながら行間を読むと非常に面白い*11



企業価値論については、企業価値「株式価値」「株式価格」とは違うとして*12、上記で紹介した「株価が5倍になるから企業価値も5倍」という考えを一刀両断している。



コーポレートガバナンスについても、M&A活動の帰結が会社統治に与える影響や、M&A活動自体に利益相反やエージェンシー等の企業統治上の問題があるとした上で説明をしている*13



4.M&A実務に関わる人全てにおすすめ
 このように、本書は、四方先生が日産自動車における30年を超える職務経験の中得たノウハウを、様々な理論から体系化したものと言え、M&A実務家としての総合力を上げる上ではもってこいの参考書である。


 ただ、本書がその冒頭に記載しているとおり*14、基本的なM&A実務の知識を身につけていることを前提に、専門用語や数式等が使われているし、また、守秘義務の関係で抽象化されている事例や記載をキチンと理解するには、ある程度の実務経験が必要であろう。その意味で、本書は、M&A実務を知りたい人のための1冊目の本ではない。自分の経験から何かをいうことがどこまで一般化できるか分からないが、多分入門書を読んで、実際に実務を経験してM&Aの実務を実感する中で、「このままでは伸びない、どうしよう!?」と成長への渇望を感じた辺り、が最も本書が役立つ時期であり,必ずやM&A実務家としての総合力をアップさせてくれるだろう。




しかし、その段階を経た後であっても、M&A実務家であれば誰しも本書の中に、「自分が日頃感じていたが言語化されていなかったもの」や「取り入れるべき日産自動車のノウハウ」等を見つけられるのではないかと思う。だからこそ、私は本書をM&A実務に関わる全ての人におすすめしたい。

まとめ
四方藤治「企業内プロフェッショナルのためのM&Aの技術」は、30年以上の実務経験を元にノウハウを理論化した、総合格闘技であるM&Aの総合力を高めてくれる本である。
M&Aのことは何もわからないという場合には、入門書等で先に基礎知識を入れる必要はあるが、M&A実務に関わる全ての人におすすめできる良書である。

*1:アカウンティングスクール | 中央大学

*2:いや、そもそもこういう発言が本当にあったのか、それとも私にその話をしてくださった方の創作なのかも不明

*3:四方藤治「企業内プロフェッショナルのためのM&Aの技術」ii頁

*4:四方藤治「企業内プロフェッショナルのためのM&Aの技術」iii, iv頁参照

*5:四方藤治「企業内プロフェッショナルのためのM&Aの技術」3頁

*6:四方藤治「企業内プロフェッショナルのためのM&Aの技術」32頁

*7:四方藤治「企業内プロフェッショナルのためのM&Aの技術」74頁

*8:四方藤治「企業内プロフェッショナルのためのM&Aの技術」76頁

*9:四方藤治「企業内プロフェッショナルのためのM&Aの技術」86頁

*10:四方藤治「企業内プロフェッショナルのためのM&Aの技術」89頁

*11:四方藤治「企業内プロフェッショナルのためのM&Aの技術」95頁以下、なおhttp://www.esri.go.jp/jp/mer/kenkyukai/050218-01.pdf参照

*12:四方藤治「企業内プロフェッショナルのためのM&Aの技術」152頁

*13:四方藤治「企業内プロフェッショナルのためのM&Aの技術」250頁以下。ただ、相対的に他の章に比べ記載が薄い印象。

*14:四方藤治「企業内プロフェッショナルのためのM&Aの技術」vi頁