劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語(完全生産限定版) [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: アニプレックス
- 発売日: 2014/04/02
- メディア: Blu-ray
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1.ついにこの日が!
当サークルは「QB被害者対策弁護団」であり、QBの横暴を法律の力を持って制し、被害者を救済するため、この約3年半の間精力的に同人活動を遂行してきた。「これからの契約の話をしよう」をはじめとする多数の同人誌をイベント等で配布している。
弁護士監修まどマギ同人「これからの契約の話をしよう」サポートサイト - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常
当サークルの活動の主眼は、「CLANNADはは人生、まどマギは法学!」をキャッチフレーズに、魔法少女まどか☆マギカにはたくさんの法律上の問題が含まれており、これを法学的に研究することが極めて興味深いという点を「布教」することである。
例えば、
魔法少女契約からの離脱の法理〜魔法少女まどか☆マギカの法的考察 - アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常
では、魔法少女契約のクーリングオフの可否について論じている。
このような活動を行う目的は、「より多くの法学徒に、まどマギ法学の担い手になってもらい、被害者救済の仲間になってもらう」ことである。二次元の世界だけで活躍する「弁護団」に、弁護士法は適用されないので、弁護士はもちろん、法学部生、ロースクール生、研究者、企業法務関係者、その他全ての法律とアニメが好きな人に被害者救済に参加して欲しい。これが当サークルの願望であった。
この念願が、ついにかなった!
なんと、神戸大学法学部において、まどマギ法学の講義が行われたのである。
当サークルとしては、神戸大学という権威のある大学において、まどマギ法学の講義がされ、法学部生、そして将来の法学部生に対して、まどマギ法の手ほどきがされたことを、全面的に支持し、賞賛するものです!
なお、神戸大学といえば、元々こんなこともあったようで、日本でこういう状況が生じるとすれば、その可能性が高いところではあった訳ですが。
2.レジュメの分析
レジュメを見る限り、民事パートと刑事パートに分かれているようである。刑事パートは、責任年齢を問題としているようで比較的シンプルだが、民事パートは結構複雑である。
中学生が自分だけで結んだ契約は…
1)有効、2)無効、3)取り消すことができる
QBは契約当事者に
1)なれる、2)なれない、3)なれるということにしないと、らちが明かないんじゃないかな..(法律も判例もないけど…)
魔法少女を救うために役に立たない法律はどれか、また一番役に立ちそうな法律はどれか
1)法律上の原因がなくなった場合は、自分のそれまでに受けた利益は相手に返さなければならない、というルール(「不当利得の返還義務」(民法703条))
2)未成年の側に、返すべき利益が残っていない場合は返さなくていいというルール(「現存利益の返還義務」(民法121条但書))
3)不法な原因のため給付した利益については、その返還を求めることはできない、というルール(「不法原因給付」(民法708条))
4)業者がお店や事務所の外で消費者と結んだ契約は、「重要事項説明書」がない場合は、いつでも契約をなかったことにできる、というルール(「クーリングオフ制度」(特定商取引法に関する法律9条))
神戸大学法学部レジュメより
さて、引用の要件を満たすため(笑)、以下解説したい。
最初のものは簡単である。3番、取り消す事が出来る。これは、民法5条2項に書いている。要するに、未成年はさやかちゃんみたいに「私って、ほんと馬鹿」な決定をしてしまうから、後で後悔したら契約を取り消せるのである。
実は、2番目は以外と難しい。普通に考えれば、QBは人間ではない。そして、通説によれば、人間以外に法律は適用されない。
考えてみてみよう。犬に対して、「人を噛んだら傷害罪ですよ!」と言ってみたところで、何の意味も無いではないか.それと同じで、QBとの関係でも法律は適用されない、これが通説である。
ところが、これを貫くと、困ってしまう。法律が適用されないとすると、QBがどんな悪い事をやっても、法律によってQBに対し是正するよう強制することはできないのである。例えば、さやかちゃんの魂が奪われたのを「戻せ」というのは、法律が適用される関係の人にしか言えないので、法律が適用されないとすると、法律に基づき「さやかちゃんを返せ!」と請求することはできない、そう、そこで話が終わってしまうのだ。
だとすると、多分答えは、3だろう。なれないのが通説だが、なれるといわないと、らちがあかないのである。
さて、それを前提に最後の問題に取り組むと、これが意外と難しい事が分かる。
例えば、1)民法703条は魔法少女にとって良い面と悪い面がある。いい面は、「ソウルジェムから魂を戻せ!」といえるということである。元に戻せ(原状回復)と求められる訳だ。しかし、悪い面は、「で、恭介君の治療費はどうしてくれるんでしょうね?」と言われてしまうことだ。このままだと、恭介君の治療費を請求されてしまう!
例えば、4)も微妙である。4)も一面では、これを使って契約から解放を求めることができる。しかし、そもそも、魔法少女は、「第二次性徴期」でなければいけない(QB談)のであって、未成年として契約の取消を求めることができる、そうすると、特に意味はないとも思えるのである。
この他の2つもやや微妙である。
例えば、2)「現存利益」については、何が「現存」かが問題となる。例えば、「ご馳走とケーキ」(マミ先輩の台詞参照)という願いで魔法少女になった場合、お腹の中にご馳走とケーキが入れば、その段階で「現存」利益はないといえよう。しかし、さやかちゃん事例を念頭に置くと、恭介の「手」が治っているという点で利益は「現存」しているとも言える。
例えば3)不法原因給付も同じであり、不法性が強い契約ということを強調すれば、QBが恭介の治療費を請求できない反面、さやかちゃんも、ソウルジェムからの魂の離脱を求められないということになりかねない。まさに「ざ〜んねん、さやかちゃんでした!」というオチである。これに対し、片面的な不法性を強調すれば、QBが恭介の治療費を請求できないという議論に使えるという面もある。
じゃあ、何が一番良さそうか、であるが、当サークルは、未成年取消を行った場合に、「恭介の医療費の返還」という問題が生じ、これをどうやって封鎖するかについてはいろいろと「議論」はあるが、「特効薬」はないという理解に達した。
そして、だからこそ、民法での解決を諦め、4)特定商取引法の世界へと羽ばたくのである。これは、取消という効果は同じように見えるが、もう1つ重要な点で違いがあるのである。
特定商取引法第9条第5項は、役務(サービス)が提供された契約について、クーリングオフ時点で「既に当該役務提供契約に基づき役務が提供され(中略)たときにおいても、申込者等に対し、当該役務提供契約に係る役務の対価その他の金銭(中略)の支払を請求することができない」とする。この趣旨については、立法担当である経済産業省が、解説書で以下のように述べる。
役務提供契約のクーリング・オフについては、役務の提供がなされた後にクーリング・オフが行使された場合には、役務の提供そのものが不当利得となるため、上記のように役務提供事業者からの不当利得返還請求を認めると、役務の提供を受けた者は、原状回復義務として提供された役務の対価相当額を役務提供事業者に支払わねばならなくなり、実質的な消費者保護にならない。
経済産業省「平成21年版特定商取引に関する法律の解説」85頁
まさに、本件でいう、恭介への治療というサービスが提供された場合のサービスの対価について、業者側による支払いの請求を拒絶できるのが、特定商取引法の効果である。
まとめ
まどマギ法学の「布教」を続けて3年半、ついに大学の法学部での講義がされるようになったことに感無量である。
講義では、なかなか難しい問題を提示されており、当サークルとしては、特定商取引法のルールが有効と考えるのだが、いかがだろうか。