アホヲタ元法学部生の日常

連絡はTwitter ( @ahowota )でお願いします。アニメを見て法律を思い、法律を見てアニメを思う法アニクラスタ、ronnorのブログ。メールはronnor1あっとgmail.comへ。BLJにて「企業法務系ブロガー」として書評連載中。 #新人法務パーソンへ #オタク流勉強法 #明認方法 「アホヲタ元法学部生の日常」(ブログ)、「これからの契約の話をしよう」(同人誌)、『アニメキャラが行列を作る法律相談所』(総合科学出版)等。

あるPMIの思い出ーラブライブ!サンシャイン!!The School Idol Movie Over the Rainbowの感想に代えて

 

 

 

【超ネタバレ注意】このブログエントリは、ラブライブ!サンシャイン!!The School Idol Movie Over the Rainbow、すなわち、2019年1月4日に公開されたいわゆる「ラ!サ!!劇場版」の核心部分を含むストーリー全体の超ネタバレです。まだ映画館に行っていない人は映画館へ急げ!!

 

1.はじめに

 

「ラ!サ!!劇場版」に心が揺さぶられ、ブロガーとして感想を書きたくなった。しかし、正面から、この映画を「『受容』と『引継』の物語」として論じたところで、あまり法アニクラスタ兼現役法務パーソンらしくないので、私は「PMI」すなわち、ポストマージャーインテグレーション(合併後の統合)の物語としてとらえたい。

 

複数組織が一つに統合される事態は、単純な企業内の組織再編、グループ内再編等でも起こる。それは、それなりに大変ではあるが、やはり第三者との関係での統合は格別である。その法的位置付けとしては、様々なものがあり、事業譲渡や会社分割等もあるが、典型は合併である。

 

本当の合併の実態にはグラデーションがあるので単純ではないが、話を単純化させれば、実質的に対等なもの(対等型)と、実質的に一方が他方を吸収するもの(吸収型)がある(法的には新設合併より吸収合併というスキームが採用されることが多いが、ここでいう対等型と吸収型はこのような法的スキームの話ではない)。

 

たしかに対等型も大変である。一部の対等合併事案では、いわゆる「たすき掛け」人事を行い、特定のポストについてまずはA社出身者、次はB社出身者と交互に担当することで、どちらからも不平等との声が出ることを防ごうするが、それは、長期間各社員に「●●出身」のラベルが貼られることを意味する。むしろ、会社全体の長期にわたる大変さだけでいえば、対等型の方が大変かもしれない。

 

2. 吸収型の大変さ

しかし、吸収型が非常に大変であることは嫌という程知っている。これは決して私が最初に入った企業(なお、その後外資系等へと転職しながら現在も某企業の法務部門で法務パーソンをやっています)のことではないが、吸収する方(強者)はともかく、とりわけ吸収された方(弱小側)はとても大変である。

 

確かに会社規模は総体的に小さいかもしれないが、弱小側にだってもともと「組織」があって、その中で出世競争がある訳である。例えば、今の法務部長は後●年。その後はあの課長が順当に行けば部長になり、その次はこの中のどちらかで、自分はその次の次あたりかな、みたいな大きな流れを読みながら職業生活の見通しを立てて毎日を過ごしている。

 

ところが、その会社が吸収されると、例えばポストが文字通り「なくなる」。(本当の)対等合併なら約半分になるのだが、吸収型だと、主要ポストは全て強い方に握られ、弱小出身は、例えば次期法務部長と目されていたようなエリートでも、たちまち出世の目がなくなる。

 

もちろん、吸収型でも、「対等の建前」に弱小側がこだわり、それを合併の条件としたりするので、合併前や合併直後は、ある程度メンツは保たれるかもしれないが、例えば出世部門と左遷部門を半々に分けて、出世部門トップは強者出身、左遷部門のトップは弱小出身とするとか、弱小出身の部長相当の者を「部付部長」とする、と言った、表面上の対応がされるに過ぎず、実質的には、弱小出身に出世の目がなくなる。

 

例えば、そのような表面上の対応の一つに、(弱小側の一番美味しい花形部門を本社側に持っていった上で)弱小側を独立した事業部として、そこだけは人員もポストも弱小側で独占させる、というのがある。例えば合併後に新オフィスに移転するが、新オフィスは、強者+弱小花形部門のスペースしかないので、弱小側は元倉庫を改造したオフィスで自由に事業をしてくれ、但し、独立採算なので稼いでくれよ、赤字になったら分かっているよな。みたいな感じである。

 

実は、これは費用を抑えてレイオフするという意味もあり、基本的には、花形部門がなくなった「お荷物部門」ばかりが残っている事業部門は、当然業績は最悪で、「成果主義」の名の下、予算は削られるばかりで、将来の展望が見られない中、勝手に辞めて行く。そのような中、優秀な人がその弱小事業部門にいれば、「踏み絵」を踏ませて、最悪の状況から救ってあげた、という体で引き抜く。

 

3.弱小側の対策と「結末」 

このような逆境において、弱小側も、色々なことを考える。例えば、弱小側の凄さ、良さをアピールして、わかってもらおうとする。しかし、おうおうにして、そこにかける熱意が空回りして、失敗し、逆効果となる。

 

また、今強者側にいる人をこちらの味方に引き込んで、弱小側を正当に扱ってもらえるように試みる。「たまたまあそこに従兄弟がいるので、ちょっと話を聞いてもらいに行くよ」、そんなこともあるだろう。

 

更には、既に統合の際に「ヤバさ」を察知して辞めていった先輩を追いかけ、先輩に相談することもあるだろう。流石に外国までわざわざ追いかけた例は聞いたことがないが。ただ、同情はしてくれるだろうが、その先輩に頼りきりになってはならず、やはり最後は自分たちで対応して行くことになる。

 

加えて、他の会社にいる友達にこちらに来てもらうという話が出てくることもある。確かに「戦力」は必要だが、なぜ優秀な人がこのような「逆境」に来るべきなのかについて合理的な説明ができなければ、やはり最後は来てくれないだろうし、その友達の転職の本当の動機によっては、その動機を別の方法で解決した方がお互いにとって良いかもしれない

 

結果、抵抗を誓い合った同志も、一人減り二人減りとなり、最終的には四方八方に散り散りになって終わることは多い。強者の支持を集めて弱小側が尊敬され、対等に扱われる「ハッピーエンド」はフィクションの世界にしか存在しないといっても過言ではないだろう。

 

しかし、それでも、この映画は全く他人事とは思えずに、Aqoursのみんなを心の中で応援した。エンディング後、館内の電気がついた時、前がボヤけて見えなくなっていた。ハンカチで目をぬぐったら、水分を吸収したその重さに、自分の感情が溢れたことを改めて気付かされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これがはてなブログへの移行後の最初のエントリです。初めての方は「初めまして」、そしてはてなダイアリー時代の方には「お久しぶりです」ということで、今後ともどうぞ宜しくお願い致します。

 

 

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