アホヲタ元法学部生の日常

連絡はTwitter ( @ahowota )でお願いします。アニメを見て法律を思い、法律を見てアニメを思う法アニクラスタ、ronnorのブログ。メールはronnor1あっとgmail.comへ。BLJにて「企業法務系ブロガー」として書評連載中。 #新人法務パーソンへ #オタク流勉強法 #明認方法 「アホヲタ元法学部生の日常」(ブログ)、「これからの契約の話をしよう」(同人誌)、『アニメキャラが行列を作る法律相談所』(総合科学出版)等。

5年間の辛口法律書レビューを振り返る〜その3

5年間の辛口法律書レビューを振り返る〜その3

 

 

労働法 (法律学講座双書)

労働法 (法律学講座双書)

 

 

1月1日から連載中の、「5年間の辛口法律書レビューを振り返る」の第3弾を公開したい。

 

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今回は、2016年6月号(No. 99) 124頁であり、今回から季刊連載になり、10冊を厳選している。

 

菅野和夫「労働法」

 

労働法 (法律学講座双書)

労働法 (法律学講座双書)

 

 

 清野 憲一「実践・財務捜査」

実践・財務捜査

実践・財務捜査

  • 作者:清野 憲一
  • 発売日: 2016/01/15
  • メディア: 単行本
 

 

*改正法未対応 中野貞一郎・下村正明「民事執行法

民事執行法

民事執行法

 

 

 荒川 雄二郎「営業秘密Q&A80」

営業秘密Q&A80

営業秘密Q&A80

 

 

 笹川豪介「企業法務のための訴訟マネジメント」

大江忠「新債権法の要件事実」

 

新債権法の要件事実

新債権法の要件事実

  • 作者:大江 忠
  • 発売日: 2018/11/15
  • メディア: 単行本
 

 

佐脇 紀代志「一問一答令和2年改正個人情報保護法(なお、このブログでは、最新版を紹介しているが、原著は「一問一答平成27年改正個人情報保護法」であった。)

 

半田正夫・松田政行 「著作権法コンメンタール

著作権法コンメンタール1 [第2版]: 1条~25条

著作権法コンメンタール1 [第2版]: 1条~25条

  • 発売日: 2015/12/23
  • メディア: 単行本
 

 

 松井茂記他「インターネット法」

インターネット法

インターネット法

  • 発売日: 2015/12/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

大内 伸哉「労働法で人事に新風を 」

労働法で人事に新風を

労働法で人事に新風を

  • 作者:大内 伸哉
  • 発売日: 2016/01/12
  • メディア: 単行本
 

 

わずか10冊ではあるが、定番以外にマニアックなものも織り込んだ回になったのではないかと思っている。

 

#杉原千畝プロジェクト 始めます

#杉原千畝プロジェクト 始めます〜パワハラ事務所からの解放を目指して〜

 

新版 六千人の命のビザ

新版 六千人の命のビザ

  • 作者:杉原 幸子
  • 発売日: 1994/03/01
  • メディア: 単行本
 

 

2021年に何をしたいか、と色々考えたが、やはり「ブラック事務所に就職した若手弁護士」に、「早く逃げろ!」と声を大にして訴えたい。パワハラ事務所は、ナチスドイツの強制収容所みたいな所であり、そこからの脱出を支援するプロジェクトという意味で「 #杉原千畝プロジェクト 」と名付けた。

 

参考:

 


1.パワハラ事務所は未だに多数存在する!

「もう令和ですよ、パワハラなんて!?」と思っている方、大声で叫びたい。

 

 

パワハラ事務所は未だに多数存在する!」

 

 

なぜか。私は主に3つの理由があると思う。

 

理由1:成功体験につながりやすい

 マネージメント経験がほとんどないのに「ボス弁」になった人が、パワハラをすると成功体験を積めるのである。

 例えば、「調子に乗っている」イソがいる場合、そのミスを利用して「ガツン」と言ってやる。そうしたら、イソがいいなりになったとしよう。

 マネジメント経験が薄いボス弁にとってこれは重要な「成功体験」である。

 

理由2:パワハラの連鎖

 意外と多いと思っているのがパワハラの連鎖であり、パワハラ事務所に入った元イソが、先輩となって、または独立してパワハラボス」「パワハラ兄弁・姉弁」として再生産される。

 このパワハラの連鎖はある意味ではパワハラをするマネジメントしか知らない」ことによる不幸だが、なかなか解決は困難である。

 

理由3:「社長」のパワハラであり、誰も牽制できない

 企業であれば、例えば課長がパワハラしていると被害者が部長に申告することで、部長に怒られ、パワハラが止まるパターンもある。

 しかし、ボス一人の事務所だと、誰も牽制できない、いわば「社長」のパワハラであり、誰も止められない。

 

2.パワハラ事務所に入らないための予防策

 パワハラ事務所に入らないための予防策であるが、「情報収集」以外にない。

 

 まず、Internet Archiveを使う。

Internet Archive: Digital Library of Free & Borrowable Books, Movies, Music & Wayback Machine

 

このWayback Machineに、検討している事務所の「弁護士紹介」のURLを入れる。過去誰が辞めたかが丸わかりである。

 それ以外に、判例データベースでボスの名前で検索して、一緒に出てくる人をかたっぱしからググる。「都内法律事務所勤務」とプロフィールに書いていれば「ダウト」である*1

 

 辞めた人が何年くらい在籍したか、という情報自体が非常に貴重だし、学部、ロー、司法修習等の関係での辞めた人との「共通の知り合い」を探し、なんとか面談を取り付けて、「この事務所を考えている(一次通過した、内定もらった)がどうですか?」と聞いてみよう。

 

3.パワハラ事務所に入った場合の対応法
(1)「ミスした自分が悪い!?」

 

パワハラ事務所に入った場合の一番重要なことは、「あなたは必ずミスをする」のである。本当にミスをする。そして、ボスは、そのミスを目敏く見つけてあなたにパワハラをする。

 

しかし、実は、そのミスは「ボスが悪い」のである。

 

典型的には、「3日目の弁護士が、被告側の復代理で簡裁に行ったら期日で司法委員に強く言われて認諾して帰ってきた」みたいなミスであるが、これは、そもそも「3日目の弁護士を一人で裁判所に行かせるな」という話であり、事務所側が全面的に悪い。

 

また、ボスにパワハラをされると、仕事が遅く、かつ、ミスをするようになる。もちろん、鬱等の病気になってそのようになるというパターンもあるが、病気になっていなくても、「余計なことを考えてしまい仕事が進まない、怒られて練っていないものを渡してもっと怒られる」が連鎖し、ミスとパワハラが相互に増幅しあう。

 

 パワハラをするボスというのは「お前がミスをしたり仕事が遅いからこうやってパワハラをされるんだ」と思い込ませようとする。確かに客観的な結果としてはミスをしている、ただ、その原因は実はボスのパワハラであるいわば「マッチポンプであることに早く気づくべきである。

 

(2)パワハラ事務所に入る可能性を想定した対策

 本当であれば入所前に、パワハラ事務所に入る可能性を想定した対策として以下の対応をすべきである。
・条件を明確化する

 おすすめは内定時に「お礼メール」を出すこと。

 

鬼舞辻綜合法律事務所

代表弁護士 鬼舞辻無惨先生

この度は、内定をいただき誠にありがとうございます。

・2021年1月5日出勤開始。土日及び祝日はカレンダー通りの休み。

雇用契約。社保完備。9時出勤17時*2退勤。

・毎月40万円+年末ボーナス220万円の額面計700万円(給与所得)

弁護士会費事務所負担

・個人事件自由(上納なし)

という条件と理解しました。

この内定を受諾させていただきます。よろしくお願いいたします。

司法修習生 竈門炭治郎

 

みたいにメールをしておく。この内容が「後でどう変わるか」は、ブラック事務所かどうかの「バロメーター」である。

 

 

*ボス弁の先生向けの注記:もしこの内容が「そのまま約束通り実現」すれば、労働条件だけを見ると、ホワイトな事務所だと思います。ただ、「いい条件を匂わせて」又は「後で変更する前提でいい条件を提示して」、その後でもう辞退できない時期に条件を悪化させる、というのは、ブラック事務所で結構よく見るパターンなので、その意味で「後でどう変わるか」は、ブラック事務所かどうかの「バロメーター」ということを理解してもらうための「変わる前」の姿として提示しています。「うちの労働条件、鬼舞辻綜合法律事務所より悪いけど(例えば地方で給料がもっと低い)、うちってブラックだった!?」みたいに心配して頂く必要はございません。なお、第2弾でも補足しております。

 

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・バックアップを見つけておく

 ダメだった場合のバックアップを見つけておく。オススメは修習の指導担当に「もし、内定先がパワハラ事務所だったら、先生のところに置いてくれますか?」と聞くこと。少なくとも、次の事務所見つけるまでのノキなら嫌だという人はまずいないだろう。

 

・自慢しない

 嬉しい心理は理解できるが、「有名事務所」に入ったとか「待遇がいい」とかで、それを周りに自慢すると、その事務所がヤバイ事務所の場合、「今更頭を下げれない」気持ちになってしまいがちである。ボスが狂ってるが、ボスが大御所過ぎて、誰も注意できないパターンは普通にある*3

 

パワハラ事務所だった場合のバックアップとして企業を検討する

「バックアップ」でもいいので、企業という選択肢を持っておくことは大事。もちろん「ブラック企業」はあるが、既にインハウスがいる企業の状況を先輩や同期に在職者・OBを紹介してもらう等して情報収集し「いざ自分がパワハラ事務所に入った場合の逃げ出す先の選択肢」として持っておく。

 

(3)「典型的言い訳」に注意!

 パワハラボスの典型的言い訳は以下のものがある。

 

 

・「お前がミスしたから」「お前の成長のためだ」

 ミスをしたからパワハラをしていい、そんな話はない。パワハラをされれば萎縮して成長できる人もできなくなってしまう。

 

 

・「指導の範囲だ」「どの事務所でも最初はこんなものだ」

 ホワイトな環境での「指導」は、「成果物」に対して行われ、「人」や「人格」に対しては行わない。そして、その成果物を「どう」直すべきか、「どうして」直すべきかが具体的に示される。それが「指導」であって、

・抽象的な指示

・場当たり的指示

・指導の名を借りた人格否定

等は、「指導」ではない。

 

 

・「コロナだから」

昨年は、予定より報酬を減らしたり、ボーナスを減らす言い訳に「コロナ」が使われることがよく見られた。コロナでむしろ増収増益*4の事務所もある訳であり、「コロナ」だといって、約束を容易に反故にするボスは、今後も何か言い訳を見つけて約束を反故にすると思ってもそう間違ってはいないだろう。

 

 

4.今パワハラ事務所で苦しんでる人へのメッセージ

(1) 「おかしい」ものは「おかしい」
・暴力を振るう
・人格を否定する発言をする
・私的な時間まで管理する(電話やLineが四六時中来る)
・重要な約束を破る
等は、「おかしい」のである。それを「自分で選んだ事務所だから」「もう少しスキルを身につけてから」「自分がミスするのが悪い」と考えて我慢するのは、まさにパワハラボスの「思う壺」である。

 

(2)「呪いの言葉」に負けない

 辞めようかな、と思った時に、「置かれたところで咲きなさい」や「石の上にも三年」等の言葉が頭を過ぎるかもしれない。これらは典型的な

「呪いの言葉」

である。こういう言葉によって、本来はすぐにでも転職を検討すべき人が、それを思いとどまり、精神を病んでボロボロになる例を知っている。だから、声を大にして「呪いからの解放」を主張したい。

 

(3)「就職先を見つけてから辞める」か「今すぐ辞める」か

 その場合、「就職先を見つけてから辞める」か「今すぐ辞める」かは難しいところである。ただ、

・物理的暴力を振るわれた

・物理的セクハラを受けた

・私的な時間まで管理されて転職活動をする時間がない

・死にたい

 等という場合には、就職先を見つけるまで待つ余裕はないだろう。「体調不良で実家で療養するのでしばらく休職します」とでも言って休み、知り合いに相談して転職先を探すのが現実的ではないか。流石に「腹パンをされたので辞めました」等であれば「短期転職者」としてマイナスに扱われることはないと思われる。

 

 それ以外の場合には、「こっそり転職活動をする」べきである。ここで、

 

ブラック→ブラック

 

という転職は残念ながらよく見かける。理由としては、
・最初に「洗脳」されて違和感に気づけなくなっている
・「早く抜け出さなきゃ」という焦りが正常な判断力を奪う

・「ブラック耐性あり」として、ブラック事務所に諸手を挙げて歓迎される

・自己肯定感が低下し、買い叩きを受け入れてしまう

等。

 

対策は上記2.の予防策を、ここでも行うしかない。

 

なお、「早く逃げ出したいが、ブラック→ブラックの転職はいやだ」という人もいるだろう。その場合の「いいとこ取り」の方法として、即独の同期に登録だけ置かせてもらい、じっくり転職活動するという方法がある。場合によっては「時間に余裕がある仕事あるから、就活と並行してやってみる?報酬は前払いするよ」と言ってもらえるかもしれない。

 

いずれにせよ、ブラック事務所に入った人へのアドバイス「死ぬな。逃げろ!」である。パワハラ事務所で身も心もボロボロにして自殺等をする弁護士は後を絶たない。死なないこと、これが一番重要である。

 

 

以上、ブラック事務所対策として、できるだけ具体的なアドバイスをしてみた。何か質問等があれば、@ahowotaのツイッターにリプをください!

 

以下シリーズ化しております。ご参照ください。


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*1:名前も書きたくない程嫌だ、名前を書いてトラブルになることを怖がっている等の可能性がある。

*2:公開当初5時と書いていたが、誤解を避けるため、変更した。

*3:ある超有名弁護士が狂っているという具体的なエピソードをその超有名弁護士の下で働いで辞めた人から聞いたこともある

*4:なお、交際費が減り減収増益の事務所もある。

5年間の辛口法律書レビューを振り返る〜その2

5年間の辛口法律書レビューを振り返る〜その2

 

 

昨日公表して好評を頂いた、「5年間の辛口法律書レビューを振り返る」の第二弾を公開したい。

 

 

 

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次は、2016年2月号(No. 95) 30頁に掲載したものである。前回のと合わせると「定番」ないしは「定評のある本」の網羅性はかなり高いのではないか。

 

江頭 憲治郎「 株式会社法

株式会社法 第7版

株式会社法 第7版

 

橋本円「社債法」

社債法

社債法

 

 柴田 義人他「M&A実務の基礎」

 

M&A実務の基礎〔第2版〕

M&A実務の基礎〔第2版〕

 

 

阿南 剛他「M&A判例ハンドブック」

 

実務分析 M&A判例ハンドブック

実務分析 M&A判例ハンドブック

 

 淵邊善彦「会社役員のための法務ハンドブック」

 

会社役員のための法務ハンドブック<第2版>

会社役員のための法務ハンドブック<第2版>

  • 発売日: 2015/08/26
  • メディア: 単行本
 

 

 近藤光男他「基礎から学べる金融商品取引法

基礎から学べる金融商品取引法 <第4版>

基礎から学べる金融商品取引法 <第4版>

 

 

 京野哲也「クロスレファレンス民事実務講義」

クロスレファレンス民事実務講義 第2版

クロスレファレンス民事実務講義 第2版

  • 作者:京野 哲也
  • 発売日: 2014/12/31
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

岡口 基一「 民事訴訟マニュアル」

 

民事訴訟マニュアル―書式のポイントと実務― 第2版 上

民事訴訟マニュアル―書式のポイントと実務― 第2版 上

  • 作者:岡口 基一
  • 発売日: 2015/08/31
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 中村直人「訴訟の心得」

訴訟の心得

訴訟の心得

 

 門口 正人他「訴訟の技能」

 

 

 松崎 謙「ニューヨーク州弁護士が教える英文契約の基礎」

ニューヨーク州弁護士が教える 英文契約書の基礎

ニューヨーク州弁護士が教える 英文契約書の基礎

  • 作者:松崎 謙
  • 発売日: 2018/03/20
  • メディア: 単行本
 

 

三輪泰右他「法務担当者による米国民事訴訟対応マニュアル」

 

 

吉川達夫「国際ビジネス法務 」

国際ビジネス法務[第2版]~貿易取引から英文契約書まで~
 

 

小西かおり「法務で使う英文メール 」

法務で使う英文メール

法務で使う英文メール

 

 

 松島 淳也・伊藤 雅浩「システム開発紛争ハンドブック」

 

 小野 斉大他「アプリ法務ハンドブック」

【BUSINESS LAW JOURNAL BOOKS】アプリ法務ハンドブック
 

 

 山本俊他「アプリビジネス成功への法務戦略」

 

*改正未対応 宇賀克也他「論点解説マイナンバー法と企業実務」

論点解説 マイナンバー法と企業実務
 

 

 *改正未対応 岡村 久道「番号利用法」

番号利用法――マイナンバー制度の実務

番号利用法――マイナンバー制度の実務

  • 作者:岡村 久道
  • 発売日: 2015/11/20
  • メディア: 単行本
 

 

 *改正未対応 日置 巴美・板倉 陽一郎「個人情報保護法のしくみ」

個人情報保護法のしくみ

個人情報保護法のしくみ

 

 

* 改正未対応 第二東京弁護士会情報公開・個人情報保護委員会「Q&A改正個人情報保護法

 

オープン・イノベーション・ロー・ネットワーク「 共同研究開発ハンドブック」

 

 

 久保原 和也「不動産賃貸借契約実務サブノート」

民法改正に対応した不動産賃貸借契約実務サブノート
 

 菅久 修一「独占禁止法

独占禁止法〔第4版〕

独占禁止法〔第4版〕

 

 金井貴嗣他「独占禁止法

 

独占禁止法 <第6版>

独占禁止法 <第6版>

  • 発売日: 2018/04/03
  • メディア: 単行本
 

 

 平尾 覚・龍 義人「競争法グローバルコンプライアンス

競争法グローバルコンプライアンス 増補版

競争法グローバルコンプライアンス 増補版

 

 

 白石忠志他「ビジネスを促進する独禁法の道標」

【BUSINESS LAW JOURNAL BOOKS】ビジネスを促進する 独禁法の道標

【BUSINESS LAW JOURNAL BOOKS】ビジネスを促進する 独禁法の道標

  • 発売日: 2015/07/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

長島・大野・常松法律事務所「 不祥事対応ベストプラクティス」

 

尾崎 恒康「 役員・従業員の不祥事対応の実務」

 森・濱田・松本法律事務所「消費者取引の法務」

 

消費者取引の法務

消費者取引の法務

  • 発売日: 2020/11/20
  • メディア: Kindle
 

 

太田 洋他「 消費者集団訴訟特例法の概要と企業の実務対応」

 

大元 慎二「景品表示法

景品表示法〔第5版〕

景品表示法〔第5版〕

  • 作者:大元 慎二
  • 発売日: 2017/04/12
  • メディア: 単行本
 

 

福井 健策「 18歳の著作権入門」

18歳の著作権入門 (ちくまプリマー新書)

18歳の著作権入門 (ちくまプリマー新書)

  • 作者:福井 健策
  • 発売日: 2015/01/08
  • メディア: 新書
 

 

 高部眞規子「著作権・商標・不正競争関係訴訟の実務」

 宮川幸子・清水至「事業をサポートする知的財産実務マニュアル」

事業をサポートする 知的財産実務マニュアル

事業をサポートする 知的財産実務マニュアル

  • 発売日: 2015/07/18
  • メディア: 単行本
 

 

 倉重 公太朗「問題社員対応マニュアル」

決定版!問題社員対応マニュアル (上)

決定版!問題社員対応マニュアル (上)

 

 

南野 森・内山 奈月「憲法主義 」

憲法主義 条文には書かれていない本質

憲法主義 条文には書かれていない本質

 

北村 喜宣「 環境法」

 

環境法 第5版

環境法 第5版

  • 作者:北村 喜宣
  • 発売日: 2020/09/18
  • メディア: 単行本
 

 

 石川 敏行他「はじめての行政法

はじめての行政法 第4版 (有斐閣アルマ > Basic)
 

 

 野村 慧「弁護士・法務人材就職・転職のすべて」

新版 弁護士・法務人材 就職・転職のすべて

新版 弁護士・法務人材 就職・転職のすべて

  • 作者:野村 慧
  • 発売日: 2019/02/27
  • メディア: 単行本

 

 

 

いかがでしたでしょうか。紹介後に改訂されているのがほとんどであり「定番」という感じがします。また明日も引き続き紹介しなす! 

5年間の辛口法律書レビューを振り返る〜その1

 

5年間の辛口法律書レビューを振り返る〜その1

 

 

Business Law Journalは大変残念なことに休刊になってしまったが、大変光栄なことに、2015年2月号(2014年12月20日発売号)以来、5年以上に渡って、当初は1年に1度、その後3ヶ月に一度、そして最終的には毎月連載させていただくことになった。

 

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この年末年始に本を読まれる場合のご参考という意味で、そして、ビジネスロー・ジャーナルの「再起動」を大いに期待する者として、「革命前夜」の雰囲気を醸成するためにも、連載で取り上げた書籍を紹介したい。

 

 

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この5年でほとんどの書籍が改訂された。できるだけ、最新版を掲載しているようにしているものの、既に記載がout-of-dateになって久しいもののや、改正法の改正内容説明書籍のように、当時は重要性が高かったが、現時点ではもはや古くなっているものも含まれることにご留意いただきたい。

 

2015年2月号(No. 83)「辛口ブックレビュー(2014年分)」28頁

 湊総合法律事務所「勝利する企業法務」

 芦原一郎「法務の技法」 

法務の技法(第2版) (「法務の技法」シリーズ)

法務の技法(第2版) (「法務の技法」シリーズ)

 

 堀 龍兒・淵邊 善彦「ビジネス常識としての法律」 

 淵邊 善彦「シチュエーション別提携契約の実務」

 

シチュエーション別  提携契約の実務〔第3版〕

シチュエーション別 提携契約の実務〔第3版〕

  • 作者:淵邊 善彦
  • 発売日: 2018/03/17
  • メディア: 単行本
 

阿部・井窪・片山法律実務「契約書作成の実務と書式」

契約書作成の実務と書式 -- 企業実務家視点の雛形とその解説 第2版

契約書作成の実務と書式 -- 企業実務家視点の雛形とその解説 第2版

  • 発売日: 2019/09/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 大村多聞他編「契約書式実務全書」

契約書式実務全書(第3版) 第1巻

契約書式実務全書(第3版) 第1巻

  • 発売日: 2020/12/25
  • メディア: 単行本
 

 

江頭憲治郎「株式会社法

株式会社法 第7版

株式会社法 第7版

 

 

*改正本注意 「Q&A平成26年改正会社法

 

近藤 光男ほか「基礎から学べる会社法

基礎から学べる会社法 第4版
 

 

 山口 利昭「ビジネス法務の部屋からみた会社法改正のグレーゾーン」

渡邊岳・加藤純子「社員の不祥事・トラブル対応マニュアル」 

 

 山口利昭「不正リスク管理・有事対応」

不正リスク管理・有事対応--経営戦略に活かすリスクマネジメント

不正リスク管理・有事対応--経営戦略に活かすリスクマネジメント

  • 作者:山口 利昭
  • 発売日: 2014/10/03
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 川口恭弘他「インサイダー取引規制と未然防止策」

 

 西村あさひ法律事務所・危機管理グループ「インサイダー取引規制の実務」

インサイダー取引規制の実務〔第2版〕

インサイダー取引規制の実務〔第2版〕

  • 発売日: 2014/08/09
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 鳥飼重和「その「つぶやき」は犯罪です」

 

 

 湯原伸一「「情報管理」に強くなる法務戦略」

「情報管理」に強くなる法務戦略

「情報管理」に強くなる法務戦略

  • 作者:湯原伸一
  • 発売日: 2014/02/28
  • メディア: 単行本
 

 

 

 福井 健策「インターネットビジネスの著作権とルール」

 

山本 孝夫「 英文ビジネス契約書大辞典」

 

英文ビジネス契約書大辞典 〈増補改訂版〉

英文ビジネス契約書大辞典 〈増補改訂版〉

  • 作者:山本 孝夫
  • 発売日: 2014/02/06
  • メディア: 大型本
 

 藤本豪「中国ビジネス法体系」

 

中国ビジネス法体系 第2版

中国ビジネス法体系 第2版

  • 作者:藤本 豪
  • 発売日: 2017/02/20
  • メディア: 単行本
 

 

 田路至弘「法務担当者のための民事訴訟対応マニュアル」

法務担当者のための民事訴訟対応マニュアル〔第2版〕

法務担当者のための民事訴訟対応マニュアル〔第2版〕

  • 発売日: 2014/02/13
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 岡口基一「要件事実入門」

要件事実入門 初級者編

要件事実入門 初級者編

  • 作者:岡口 基一
  • 発売日: 2018/05/01
  • メディア: 単行本
 

伊藤眞「民事訴訟法 」

 

民事訴訟法〔第7版〕

民事訴訟法〔第7版〕

  • 作者:眞, 伊藤
  • 発売日: 2020/12/23
  • メディア: 単行本
 
 

岡口基一要件事実マニュアル

要件事実マニュアル(第6版) 第1巻 総論・民法1

要件事実マニュアル(第6版) 第1巻 総論・民法1

  • 発売日: 2020/12/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 

中山信弘著作権法

著作権法(第3版)

著作権法(第3版)

 

 岩永利彦「キャリアアップのための知財実務のセオリー」

 

 

 鮫島正洋「技術法務のススメ」

 企業人事労務研究会「企業労働法実務入門」

 

 

 水町勇一郎「労働法」

労働法(第8版)

労働法(第8版)

 

 

旬報法律事務所「 未払い残業代請求法律実務マニュアル」

未払い残業代請求 法律実務マニュアル

未払い残業代請求 法律実務マニュアル

  • 発売日: 2014/07/18
  • メディア: 単行本
 

 

南野森・内山 奈月「 憲法主義」

憲法主義 条文には書かれていない本質

憲法主義 条文には書かれていない本質

 

吉田利宏・塩浜克也「 法実務からみた行政法

 

 大島義則「行政法ガール」

行政法ガールII

行政法ガールII

  • 作者:大島 義則
  • 発売日: 2020/11/02
  • メディア: 単行本
 

 

 以上であるが、また翌年以降に紹介した書籍を明日アップする予定である。

ビジネスロー・ジャーナルについて

Business Law Journalについて

 

 2010年代前半の最大の業績は何か、と言われると(多数の同人誌もあるが)『アニメキャラが行列を作る法律相談所』 になるだろう。

アニメキャラが行列を作る法律相談所

アニメキャラが行列を作る法律相談所

  • 作者:ronnor
  • 発売日: 2011/12/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

  単純なブログ書籍化ではなく、ブログのネタを原作としてほぼ書き下ろすという大変な営為であったが、同人サークル「QB被害者対策弁護団」のご協力も得て、大変ご好評頂いた。

 

 では、2010年代後半の主な業績はというと、企業法務系ブロガーの名前でBLJに「辛口法律書レビュー」の連載を持たせていただいたことだろう。同世代の研究者の実名で検索しても1桁ということもある*1CiNiiで「企業法務系ブロガー」で検索すると、2桁の業績が出てくる、というのは異常事態以外の何者でもない。

ci.nii.ac.jp

 

 そもそも、毎年行っている年1度の書評特集に寄稿して欲しいという話からBLJとの関わりが始まったのであった*2。最初は年1度だったのが、3ヶ月ごとの連載になり、最後は毎月の連載となった。*3「匿名ブロガー」について、その著者名ではなく記事の質で評価して連載をさせて下さる、というのは、大変貴重なオファーであり、個人的には密かに名物連載「牛島信のローヤー進化論」の連載回数を超えられないか、ともくろんでいたところであった。

 

 一時期は、同じ会社の雑誌事業部と書籍事業部で「連載→書籍化」といういい流れができており、エコシステムが完成しているなぁと思っていた頃もあった。その後、書籍事業の中止等の経緯等を踏まえ、色々と心配していたが、150号、2020年末という1つの区切りで休刊となってしまった。

 

 BLJ休刊に対しては、反響も極めて多く、多くの方のエントリを見たが、個人的には、企業法務戦士先生の、要旨、中堅弁護士の記事は他の企業法務系の雑誌でも読めるものであり、BLJの真骨頂は「法務担当者の生の声」を拾うというところと力説するエントリが印象に残った*4

 

k-houmu-sensi2005.hatenablog.com

 

 どのメディアにとっても、紙の雑誌の収益化というのは困難である。最近の動きを見ると、BLJと同様休刊が相次いでおり、「書籍化に向けた連載をする」「書籍等を知ってもらう」といった、従来紙の雑誌が果たしていた目的を実現する方法として、紙の雑誌以外に活路を見出す傾向が顕著である。例えば、出版社がブログサイトを作って記事を連載してもらってそれを書籍化につなげる等、法律系においても「紙の雑誌以外」の方法で工夫しているところが見られる。

 

 ただ、「紙の雑誌」というオールドファッションなメディアにも、当然ながら、その良さがある。「必ず1ヶ月に1度締め切りが来る」という締め切り効果は、書評が継続的になんとか「形」となった大きな理由であった*5。その意味では、紙の雑誌を休刊した上で、「新企画やwebサイトなどを通じて、法曹界への貢献の道を模索していく所存」というのは、理解はできるが、率直に言って「寂しい」ところである。

 

 また、BLJ他の紙の雑誌と比較しても、企業法務戦士先生の指摘される法務担当者に寄り添った企画を実現する企画力だけではなく、編集の力量において大きな差があったと思う。編集については、「編集に校正だけではなく、校閲もやっていただける」という、いわゆる「Y斐閣サービス」を提供しており、この点はまさに圧巻であった。編集者個人の力量という側面も大きいと思われるが、「尖った記事・企画が多いにもかかわらず安心して書ける・読める媒体」という、2つの一見相矛盾する要請を調和させられたのはこの編集力あってのものであり、(執筆者、連載陣の貢献を否定するものではないものの、)BLJが築き上げたブランドや名声はこの編集者の方の毎日の努力あっての賜物だ、と私は思う。

 

 企業法務戦士先生は、自ブログ紹介に寄せて、「終わりは始まりの一歩目です。今が革命前夜。」*6という粋なツイートをされている。

 

 

 ブログやSNSにおける多くの読者の「これで終わるのは惜しい」という思いはまさに「革命前夜」を思わせる。電子雑誌、電子書籍(+POD)、紙の書籍形式の実質雑誌*7 その他形式は分からないが、何かの新たな「始まり」を期待したい。そこにおいて、「法務担当者の生の声を拾う」「尖った企画なのに安心して読める編集力」といった、他の雑誌にないBLJ独自の「強み」が復活していれば、(そのタイトルがBusiness Law Journalである場合はもちろん、違う名前になったとしても、)その新たなプラットフォームに、人はまた集うであろう。そして、できることなら、その新たなプラットフォームでの業績を「2020年代の主要業績です」と胸を張ることができる未来を期待したいところである。

 

 

 

ronnor.hatenablog.com

 

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*1:先ほど、とある同級生の研究者の方のお名前で検索したら9件であった。もちろん、同世代でももっと多くの結果が出てくる研究者の先生方もいらっしゃる。

*2:もちろん、それ以前から長年愛読していた訳であり、その意味では、親和性は高かった。

*3:元々匿名の法務担当者の原稿を掲載すること自体はよくなさっている雑誌ではあるものの、

*4:その他、dtk先生や伊藤先生のエントリ等も印象に残った。

*5:電子媒体の場合でも一応「締め切り」があるが、その締め切り効果の程度は必ずしも大きくない

*6:革命前夜といえば、とあるシリーズを思い出すのアニメ脳なのですが。

*7:いわゆる「行政法研究」のような感じ

#経営アニメ法友会 設立宣言&ニジガク2話に見るアニメの知見の法務への活用概論( #legalAC )

#経営アニメ法友会 設立宣言&ニジガク(主に)2話に見るアニメの知見の法務への活用概論( #legalAC )
 

*本エントリは、ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会のネタバレを含みます。

 

 

 

*本エントリは、法務系アドベントカレンダー第5日目のエントリです。

 

adventar.org

せこ@seko_lawさんから

プロダクトカウンセルって何だろう? - 思い出したいことがある

 の中で、「明日から続く経営アニメ法友会も楽しみです」と言っていただきました。ありがとうございます。12/6のちくわ@gigakameさんが「真打」ですが、以下、「前座」を努めさせていただきます。

chikuwa-houmu.hatenablog.com

 

1.  経営アニメ法友会設立宣言
 経営アニメ法友会は、アニメの知見を法務実務に活かすことを希望する法務実務*1に従事する実務家によって構成される任意団体である。
 私たちは、アニメで感動した「あの場面」が、法務実務に活きるのではないか、という仮説を立て、それを法務実務で実践してきた。その結果、「アニメは法務実務に役立つ」という結論を導き出した。
一人でも多くの法務実務家がアニメを法務実務に活かすことを希望し、そのための親睦団体として、経営アニメ法友会を設立する。
 

 加入方法は簡単。 #経営アニメ法友会 ハッシュタグでツイートすることである*2
 

 当面の目標は「後世の企業法務研究者がこの時代の企業法務実務家はアニメの知見研究が盛んだったと結論づける世界を作る」ことであるが、最終的には、各会員が法務実務にアニメを活かす「実践」を集積し、1つのノウハウとして法務実務を向上させることにある。

 

 

 

 

2. ニジガク(主に)2話に見るアニメの知見の法務への活用概論

 

上記の総論的な話だけでは、「何故に、法務実務にアニメを活かせる、と結論づけることができるのか?」という問題に対する回答にならない。よって、各論の例として、今季私が激推しのニジガク(第2話が中心だが、それ以降のエピソードも含まれる)を例に説明したい。

 

(1) ニジガクとは

そもそも、ニジガクとは何だろうか。正式名称はラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会であり「虹(ニジ)ヶ咲学(ガク)園」を略してニジガクと呼んでいる。ラブライブ!及びラブライブ!サンシャイン!!に続くラブライブ!シリーズ第3弾である。

 

当ブログでも、

ronnor.hatenablog.com

 

ronnor.hatenablog.com

 

等、ラブライブ!シリーズを取り上げてきたところである。第2弾では、秋葉原から沼津へと舞台が移り、第3弾である今回の舞台はお台場(臨海地区)である。

 

高校生の上原歩夢と、その幼なじみである高咲侑は、スクールアイドル、「優木せつ菜」のライブを観て、スクールアイドルになりたい、と考えた。しかし、自分たちの通う学校、虹ヶ咲学園では、ちょうどスクールアイドル同好会がお取り潰しになったところで...。というような感じのストーリーある。

 

 

(2) 「外」を転々とする新生スクールアイドル同好会に見る法務の役割

 ニジガク第2話では、生徒会に睨まれ、学園の「外」を、居場所(練習場所)を探して転々とする新生スクールアイドル同好会の姿が描かれている。

 

 このような、「中」に位置付けられながらも、「外」との関わりが深く、そしてその「居場所」を探している新生スクールアイドル同好会の姿というのは、法務の姿と重なって見える。

  

 営業や製造は会社の花形である「プロフィットセンター」である。人事は「ヒト」、経理は「カネ」という、企業に不可欠な明確なモノをガッチリ掴んでいる。これに対し、法務については、経産省の国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会が、「法務のあり方」を研究して報告書を出している。

 

www.meti.go.jp

 

 これをどう評価するかは見解が分かれるところであるが、私は、法務が企業に不可欠な明確なモノをガッチリ掴めていないからこそ、そのアイデンティティ・クライシスに陥り、「自分探し」をしているのだろう、と想像する。これは、活動場所を探して学園の外で、辰巳駅前こどもの広場やお台場レインボー公園等を転々としている新生スクールアイドル同好会の姿とも重なる。*3

 

 

 そのような中で、何が法務が掴んでいる/掴むべきものかというと、外部的な「法*4」と内部的な「リスク」の双方なのではないか、と考えたところである。

 

 

 つまり、企業はリスク管理を行う必要があるところ、そのリスク管理のツールが「契約書」等の法務が所管する各種法律文書である。そして、法務が機関法務を(少なくとも総務との共管という形で)司っている前提であれば、契約書等に関係がない広い意味でのリスク管理においても、取締役等の役員において善管注意義務違反がないように、そして経営判断の原則(いずれも会社法である)によって救われるように、法的な観点からサポートするのも法務の役割である。更に、いざリスクが現実化した後の対応についても、(広報等他の部門が行うべきものも少なくないが)訴訟等の対応を法務部門で行う。

  

そして、このようなリスク管理は、上記の社会規範を含む意味の法を用いて行う以上、法務は会社内の「社会に対して開けた窓」として、会社の外と中をつなぐ役割を果たす必要がある。

 

 

 だからこそ、法務は社外のセミナー、交流会、SNS等の形で積極的に社会に出るべきである。ニジガク2話における各部員たちの子どもをあやしたりお年寄りとゲートボールをする姿は、まさにこのような法務にとってのあるべき社会との関わり方の象徴なのである。

 

 

 

(3) チームビルディングと法務組織のデザイン

 ニジガクには演劇部を兼部するアイドルである桜坂しずくが登場する。法務でも、兼務・兼職はよく見られるところで、例えば法務専任一人と総務との兼任者一人の1.5人のチームといった会社もあるようである。

 

 これだけではない。ニジガクで、アイドル達はぶつかり合い、時にはスクールアイドル同好会廃部の危機に陥ることもある。これは、一種のチームビルディングの悩みであるが、この悩みは、法務組織でも同様である。

 

 

 ニジガク2話では、じぶんなりの「かわいい」を追及する中須かすみ(かすみん)が、「熱さ」を求めるスクールアイドル同好会初代部長のせつ菜と対立し、スクールアイドル同好会は、文字通り、廃部の危機に陥った。また、新たに2代目部長としてかすみんが就任し、歩夢や侑を部員にするが、歩夢に対して「ぴょん」を語尾につけたPVの撮影を強要する等、自分の考える「かわいい」を押し付けようとして、失敗する。しかし、歩夢は、「伝える相手のことを意識せよ」という朝香果林のアドバイスで、自分なりの「かわいい」を見つけ出す。自分なりの一番をそれぞれ叶える方法がある、それを探そう、その方が楽しい、という侑。かすみんも、いろんなカワイイもカッコいいも一緒にいられる世界で一番のワンダーランドに向け、一緒に頑張ることにした。

 

 

このようなエピソードは、法務のチームビルディングの「あるべき姿」を考える上で参考になるだろう。それぞれが異なるバックグラウンド、仕事観、キャリア観を持って集まってくる。でも、それぞれがこの「法務組織」というプラットフォームで自分なりの一番をそれぞれ叶えることを希求する。そして、その「法務組織」が適切なプラットフォームであれば、「いろんなカワイイもカッコいいも一緒にいられる世界で一番のワンダーランド」になることができるだろう。ここでいう「プラットフォーム」作りは法務組織のデザインの問題でもあり、法務のあり方は法務自身で決めることができる。

 

 

 このような「いろんなカワイイもカッコいいも一緒にいられる世界で一番のワンダーランド」実現に向けた具体的な対応としては、やはり、相手の個性の尊重、つまり、会社の方針の押し付けではなく、各法務部員が「じぶんらしくある」ことを認めることから始まるだろう。その上で、それぞれ違う各人が、主観的に「やりたいこと」を実現しようと前向きに進める中で、「結果的に」会社にも貢献することになっている。それは、マネージメントの差配、とりわけ、どのような仕事についてどういう説明をし、どういうモチベーションをつけさせてやらせるか等とも関係するところだろう。

 

 加えて、制度面でも、福利厚生系はもう法務が口出しできないほどガッチリしている会社も多いだろうが、例えばインハウスであれば、「もう10年以上前からいるよ」」という会社もあるが、全く新しい存在で、それに対応する新しい制度を自分で手作りできる会社もあるだろう。その中で、例えば「インハウスが希望すれば法律事務所に出向できる制度を作ろう」等と、インハウスが来たくなるようなプラットフォームにしていく努力の余地がある会社もあるだろう。法務組織は、ニジガクに学んで、多様な法務パーソンが1つのいいチームになれる、「いろんなカワイイもカッコいいも一緒にいられる世界で一番のワンダーランド」を目指すべきである。

 

 

(4) 多様!? なアイドルに学ぶ法務の姿

 ラブライブ!シリーズは、時を経てますます「キャラ立ち」が激しくなってきた。例えば、ライブ中はいわゆる「璃奈ちゃんボード」で顔を隠す天王寺璃奈や、神出鬼没の「生徒名簿上不存在」アイドル優木せつ菜等、多様なキャラクターがニジガクの魅力である。法務的には眉を潜めざるを得ないが、スクールアイドル同好会復活のために手段を選ばず同好会のネームプレートを取り戻そうと生徒会室を襲撃する中須かすみ(かすみん)も、「多様」といえば「多様」であろう。

 

 そして、このような多様性(diversity)は、法務においても重要である。

 

 

 ここで、「みんな同じような前提知識を持って、同じようなスキルがあって、同じようなことを考えてる方がマネージメントもしやすいし、成果も上がる」という考えもあり得る。もしかすると、伝統的日本企業はそのような方向性を志向している(つまり、新卒一括採用で研修をして、均質の従業員に育て上げる)かもしれない。

  

 しかし、法務が上記のとおり、会社における「社会に対し開けた窓」なのであれば、多様性こそが、「会社の論理」を断ち切り、社会とのつながりを取り戻す上での重要な鍵となる。

 

 

 例えば、社長肝煎プロジェクトが進んでいるというところで、法務が同質組織なのであれば、仮にそれが社会的に見ておかしくても「黙る」結果になるのは目に見えている。

 

 しかし、法務が多様であれば、ある意味において空気を読まず、「こんなことやったら、社会から批判されますよ。最低限記者会見でどう答えるかを事前に考えた上で進めてはどうですか?」といった声が出てくる可能性が高まる。このように、真の意味で、法務としての役割を果たす上では、「多様性」が重要なのである。

 

 ラブライブ!はスクールアイドルとファンにとっての最高のステージである。全国のアイドルグループとの競争に勝ち抜き、勝利するために必要なのはメンバーが1つの色にまとまることのようにも思われる。しかし、せつ菜の「大好き」が、かすみんの「大好き」を否定してしまった。その結果、一度はバラバラになってしまったものの、「必ず以前の繰り返しにならないやり方があるはずだ。それを見つけるためには、かすみんと全然違うせつ菜先輩が必要である。」このようなかすみんの発言は、物語の舞台(聖地)ではないが、まさにダイバーシティの発想だ。

 

 

(5)サポートだけれども、中の人としてのサポート

 侑は、スクールアイドル同好会に参加し、部員にはなりながらも、アイドルとしてではなくサポート(マネージャー)の役割を果たす。確かに法務自身が製造・営業等の活動に従事することはないのであって、法務はその意味では管理部門の一角としてサポートをする訳である。

 

 ここで、例えば、ダイバーシティ東京プラザにおけるライブの実施においては、外部の人(例えば、会場の担当者)の協力がなければ、ライブは成立しなかった。しかし、侑は、このような外部の人としてスクールアイドルに協力するのではなく、「中」にいて、サポートする。これこそが法務の役割である。

 

 

 「中にいる」ことの意味は、評論家ではいられないということである。「外」であれば、無責任に論評をして、後は「野となれ山となれ」ということだって理論的にはできる。しかし、「中にいる」以上、既に運命共同体である。その意味では、自分のコメントが自分の運命にも直接影響するという責任感を持ってサポートしていくことになる。

 

 

 中にいれば、「これは法的におかしいですよ!」と声を掛ければ、その瞬間に返す刀で「そうか、ありがとう。じゃあ、法的におかしくない方法で、このプロジェクトを進めるにはどうすればいいんだろうか?」と聞かれる。外の人なら「それを考えるのはあなたです」でいいのかもしれない*5が、法務としては、まさに「自分ごと」として考える責任を負うのだ。

 

 

(6)「権力者」や各部門との付かず離れずの関係

 スクールアイドル同好会2代目部長のかすみんは、生徒会に睨まれている。同様に、法務と経営の関係も非常に難しく、一歩間違えれば経営の信頼を失い、「お荷物」として疎まれてしまう。「中の人」としてのサポートである以上、経営との信頼関係は不可欠である。また、法務が、上記の「法」に基づく「リスク管理」を行うためにも、ビジネスが何を考え、何を行っているのかを把握しなければならない。

 

 しかしながら、だからといって、常に経営や各部門の意向に対し、唯々諾々の姿勢でいいか、というと、法務としての価値を発揮できないという問題がある。例えば、

 

・工場で廃液漏れが生じ、本来届け出義務があるが、今届けると来年3月に引退する予定の創業社長に花道を飾れないので、隠してもいいか?

 

・この会社は、バブル時代からの含み損を経理が様々な工夫で「飛ばし」ており、その事実は各担当者が墓場まで持っていくことになっているが、最近空気を読めない監査法人にうるさく言われている。インハウスで弁護士の資格あるんだから、弁護士の名義で監査法人に対し「問題がない」という意見書を書いてくれないか?

 

等々という事情の下において、法務担当者(インハウスローヤー)のあなたは、経営のいうとおりにするのか、というのを考えて欲しい。そのような要求は色々なパターンがある。各部門の要請のこともあるし、専務からの命令、場合によっては社長直々の命令、ということもある。

 

 

 かすみんは、いくら権力者である生徒会長でも、納得できないものは納得できない、としている。まさに「平時には良好な関係が望ましいが、止めるべき時は止める」という法務の姿勢を実践しているといえよう*6

 

 

(7)コミュニケーション

 このように、かくも法務の仕事は難しい。そのような難しい仕事をする上での潤滑剤はコミュニケーションである。ここで、果林は、歩夢に「伝える相手のことを意識せよ」とアドバイスしたが、これは決して「おせっかい」ではなく、法務が円滑なコミュニケーションをする上で不可欠である。

 

 

 例えば、法律用語の意味が分からない営業部門が勇気を出して相談してくれたのに、法律用語ばかり使ってこ難しい話をしていたら、「法務にまた相談したい」と思うだろうか

 

 

 そういう最低限の配慮に加え、例えば、営業の現場ではやりたくないが、「社長案件」なのでやらざるを得ない、という場合に、法務の「違法です」という言葉は、営業の心に響かない。むしろ、取締役会資料において弁護士なら明らかに「気付く」言葉をちりばめ、「弁護士である社外取締役」に根回しした上で(特に取締役会事務局に法務が噛んでいる場合)、その人に社長を止めてもらう、といった方法をアドバイスすると、営業の現場の信頼を掴めるだろう。

 

 

(8)「名を捨てて実を取る」

 このような、法務実務において「名を捨てて実を取る」ことは重要である。要するに、結果的に会社の利益になることが実現されるためには、あまり「メンツ」とかを考えない方がいい、ということである。

 

 例えば、本来は生徒会長によるスクールアイドル同好会の解散自体が無効であっても、そこを争って血みどろの戦いに引きずり込まれるのではなく、あえて「部員が5人以上集まったらいつでも申請して下さい」とのせつ菜の言葉どおり、「新規同好会設立申請」の対応するのが「大人の対応」なのである。

 

 

(9)先入観を捨てる

 侑は、(μ'sやAqoursがそうであったように、)ラブライブ!を目指すというのがスクールアイドル、という先入観をブチ壊し、せつ菜に、「スクールアイドルがいてファンがいる、それだけでいい」というオルタナティブを示す。

 

 法務も同じであり、それまでの先入観に基づき「無理だ」と考え、思考停止に陥るのではなく、先入観を捨てて新たな道を切り開くことが重要である。

 

 例えば、現行法上明らかにブラックでも、「そのビジネスが(単に自社にとってだけではなく)社会にとってとても利益になる」のであれば、ロビイングをやって法改正をしてしまえばいい。これからの法務担当者には、こういう柔軟な発想が認められる。

 

 

(10)コンプライアンス

 いずれにせよ、法務部門は、広い意味での法を司る部門である以上、コンプライアンス、すなわち(そのような広い意味での)法令遵守は重要である。

 

 その時ポイントになるのは、世の中には、リアルブラック、リアルホワイトは(確かに一部存在するものの)あまり法務では問題とならず、法務で問題となるのが「(いろんな程度のある)グレー」だということである。

 

 

 上記のような「止める」べき場合は「これは黒です」と言わざるを得ない場合もあるが、それ以外の場合は「ビジネスのやりたいことを実現しながら、同時にグレーをできるだけ白に近づける方策」を考えることになる。

 

 

 例えば、「スクールアイドル同好会が廃部になった、と主張して強権を発動する生徒会長を止めたい!」という目的がある場合を考えてみよう。それを実現するためには、いろいろな方法がある。

 

 例えば、デモやボイコットで生徒会長の横暴を訴えるという方法はあるだろうが、これで生徒会長が考えを改めるかはわからない。

 

 また、法的にブラックに近い方法として、かすみんが実施した、猫を生徒会長に襲わせてその隙にスクールアイドル同好会のネームプレートを盗むという方法もあるが、ある意味では「窃盗」であり、少なくとも安全な方法ではないだろう。

 

 

 そこで、果林の採用した、「生徒会長の許可を得て生徒会室に入室し(建造物侵入罪にならない)」、「生徒会長がいなくなった隙に生徒会名簿を借り(使用窃盗として無罪)」、「実は生徒会長がいう『生徒会長である中川菜々とスクールアイドル同好会部長の優木せつ菜との話合いで廃部になった』という事実が嘘であり、実際は廃部が無効であることを明らかにする」という方法は、できるだけグレーを白にする方法として大変優秀である。

 

 

 果林のような、同じ目的達成ができる範囲でもっとも法的リスクが低い方法を選択する、という発想こそが法務パーソンにとって不可欠の発想であり、法務パーソンは果林を見習うべきである!

 

 

 法務が理想とすべきアイドルは、果林だけではない。「動物の放飼い」を禁止する校則と、目の前にいる璃奈の強い思い。この双方の調和をなんとか実現するために、はんぺん(子猫)を「生徒会お散歩役員」として学校の一員に迎え入れることで「グレー」をできるだけ白に近づける、そんなせつ菜の発想もまた、まさに法務のあるべき姿だ。

 

 

 このように、ニジガクだけでも、様々な法務実務へ還元することができる素晴らしい知見が豊富に含まれている。一人でもより多くの法務実務に従事する皆様が、アニメの知見を生かして法務実務を向上するきっかけになれば幸いである。 

 

 

 

以上はあくまでも、1例ですが、来年も #経営アニメ法友会 活動を進めて参ります!! 何卒よろしくお願いいたします!!

 

 

 

*1:典型的には企業法務実務であるが、自治体法務実務等の領域が広く含まれる

*2:私も #アニメ経営法友会 という間違ったタグで呟いたことがあるが、こちらだと、某親睦団体の概要を説明するアニメ、のようなイメージなので、アニメを真ん中に持ってくるべきであろう。

*3:この点については、企業法務マン迷走記2:夜に「希望」を語れば 『希望の法務』を読んでの言及する、法務の「拠所のなさ」「 心細さ」が参考になるだろう。

*4:ただし、コンプライアンスが「社会規範」を含むなら、そのような社会規範を含むところの法である

*5:なお、そういうスタンスではない外部弁護士の先生がいらっしゃることは理解しており、大変ありがたいことである。

*6:私はあまりガーディアンとかパートナーといったバズワードはあまり好きではない。詳しくはBusiness Law Journal2018年10月号(No. 127)118頁をご覧になられたい。

リーガルアドベントカレンダー( #legalAC )Business Law Journal連載連動企画「改正民法(債権法)のリサーチどうやってますか?」

リーガルアドベントカレンダー( #legalAC )Business Law Journal連載連動企画「改正民法(債権法)のリサーチどうやってますか?」

 

 
「企業法務系ブロガー」として、ビジネス・ロー・ジャーナル(BLJ)に書評を連載させていただいているronnor(Twitter:@ahowota)と申します。

 

さて、BLJ11月21日発売号では、「辛口法律書レビュー(2020年10月)」として、民法(債権関係)改正に伴う参照すべき書籍の変化に対応した、民法リサーチの「ベストプラクティス」を模索しています*1

 

 

詳細は本誌をご覧頂きたいものの、結局本誌記事の内容は、私が個人的に考えたやり方を紹介するにとどまっており、「結局みんなはどうしているの?」という問題意識に応えられていません。(ただ、BLJ本誌記事では、部会資料首っ引きで調べていた人が、部会資料首っ引きからかなり解消されたきっかけになった書籍等を紹介していますので、是非ご覧ください。 #ステマ)

 

www.businesslaw.jp


そこで、2020年法務系アドベントカレンダー、 #裏legalAC 企画として、「改正民法(債権法)のリサーチどうやってますか?」というテーマにつてアンケートを取り、その結果を踏まえた、集合知を紹介することとしました! ご協力いただきましたツイッターの皆様、誠にありがとうございました!

 

kanegoonta.hatenablog.com

 

 

1.アンケート結果

私の独断と偏見で、多くの人が使っているだろう3種類をリストアップし、後は「それ以外の書籍のお薦めはリプしてください」という形でアンケートをしたところ、173人もの多くの方のご協力を頂きました。心よりお礼申し上げます!

 

 

輝ける第一位は筒井・村松『一問一答民法(債権関係)改正』でした。

 

 

 

62.4%(108人)もの支持を得ました。流石、立法担当者解説です。とはいえ、公刊が2018年3月、すなわち、既に2年半以上が経過している訳です。今回の書評記事とアンケートは、ある意味、「そろそろオルターナティブは出ていないのか?」という問題意識に基づくものでしたが、このアンケートでも明らかになった『一問一答』の強さは、逆にいうと、他の書籍の「弱さ」を示唆するとさえ言えるでしょう。

 

 


第二位は潮見本で、20.8%(36人)の支持を得ています。具体的には(編著を除けば)、


ラクティス民法 債権総論〔第5版補訂〕

 

 


新債権総論1(法律学の森)

 

新債権総論1(法律学の森)

新債権総論1(法律学の森)

  • 作者:潮見 佳男
  • 発売日: 2017/06/17
  • メディア: 単行本
 

 


新債権総論2 (法律学の森)

 

新債権総論2 (法律学の森)

新債権総論2 (法律学の森)

  • 作者:潮見 佳男
  • 発売日: 2017/07/12
  • メディア: 単行本
 

 


基本講義 債権各論〈1〉契約法・事務管理・不当利得 (ライブラリ法学基本講義)

 

 


辺りで、後は
民法(債権関係)改正法の概要*2

 

民法(債権関係)改正法の概要

民法(債権関係)改正法の概要

  • 作者:潮見 佳男
  • 発売日: 2017/08/14
  • メディア: 単行本
 

 



民法(全) 第2版*3

 

民法(全)(第2版)

民法(全)(第2版)

 

 


といった感じでしょうか。

 

 


そして、これに大きく差をつけられたのが改正債権法コンメンタール(法律文化社)です。

 

改正債権法コンメンタール

改正債権法コンメンタール

  • 発売日: 2020/10/05
  • メディア: 単行本
 

 

6.9%(12人)でした。2020年に公刊された改正債権法の卓上コンメンタールということで、それだけを見ると、『一問一答』に代わるオルターナティブになりそうなところですが、残念ながらあまり人気がなかったのは本誌連載記事にも記載した、「共著リスク」のせいでしょうか。ただし、「改正債権法コンメンタールを足掛かりに、部会資料にもぐったりしております。」という声も上がっており、リサーチの「足掛かり」としては使えるものの、これだけでリサーチが完結しないのが不満という感じなのではないでしょうか。 

 

 

 

 

 

2.個別コメント

私が挙げた3種類以外の「自由記載」として、コメントを比較的多く頂いたのは、日本弁護士連合会『実務解説 改正債権法 第2版』(弘文堂)及び中込一洋『実務解説 改正債権法附則』(弘文堂)です。

 

実務解説 改正債権法 第2版

実務解説 改正債権法 第2版

  • 発売日: 2020/03/12
  • メディア: 単行本
 

 

 

実務解説 改正債権法附則

実務解説 改正債権法附則

  • 作者:中込 一洋
  • 発売日: 2020/03/12
  • メディア: 単行本
 

 

 

弘文堂が日弁連の債権法改正ワーキンググループと提携して頑張っているという感じですが、個人的には、著者が、審議会の弁護士委員をバックアップするメンバーとして、確かに立法には関与しているものの、さりとて、立法担当者ではないという立場であることが逆に中途半端になっている*4という印象をもたなくもありません。

 

 


中田裕康『債権総論第4版』(岩波書店)や、道垣内=中井『債権法改正と実務上の課題』(有斐閣)もリサーチに使うというご意見がありました。

 

債権総論 第四版

債権総論 第四版

  • 作者:中田 裕康
  • 発売日: 2020/10/09
  • メディア: 単行本
 

 

 

債権法改正と実務上の課題 (ジュリストブックスProfessional)

債権法改正と実務上の課題 (ジュリストブックスProfessional)

 

 

 

これらは私も個人的に『一問一答』と併用しております*5

 

それ以外には、鎌田薫他『重要論点 実務 民法(債権関係)改正』や平野裕之『新債権法の論点と解釈』(慶應義塾大学出版会)は、私個人としては、あまり使っていなかったのですが、たしかに「とっかかり」という意味ではあり得るかもしれません。

 

 

新債権法の論点と解釈

新債権法の論点と解釈

  • 作者:平野 裕之
  • 発売日: 2019/01/25
  • メディア: 単行本
 

 

 


更に、『一問一答』が出た後の立法者見解の補足としてNBL立案担当者解説 民法(債権法)改正の概要(1106号*6〜)及び「債権法改正に関する経過措置の解説」(1156号*7 〜)が参考になります。本誌は「書籍」の評釈であったので割愛しましたが、確かに、『一問一答』の補足になります。

 

 

加えて、大村敦志・道垣内弘人『解説 民法(債権法)改正のポイント』(有斐閣)も挙がりました。

 

解説 民法(債権法)改正のポイント

解説 民法(債権法)改正のポイント

  • 発売日: 2018/06/15
  • メディア: Kindle
 

 

結局、新注釈民法シリーズが出るまでは、このような「多数書籍併用」で行くしかないのではない、ということではないでしょうか。

 

 

3.そもそも某出版社のコンメンタールがもっとしっかりしていれば…。
ここで、何度も繰り返していますが、私は債権法改正まで、『我妻・有泉コンメンタール民法 総則・物権・債権』を使っており、確かに最近の同書には最新の情報の変化に改訂が追いついていない部分等アラもあったものの、法務パーソンが机上に置いてパッと参照するものとしては最高だと思っていました。ところが、Business Law Journal2019年11月号本欄で苦言を呈した通り、最新版(第6版)が2019年に発行されたにもかかわらず、改正条文については、ポイントと称して一問一答の情報量にも満たない情報が記載されるにとどまっており、これでは改正法のリサーチには使えない訳です。

 


それ以外にも同出版社はタイトルに「コンメンタール」と付く書籍を複数売り出しており、これらが実務のリサーチに本当に使えるものであれば、こんな悩みは必要はなかったはずです*8。同社は本当に良い本を多数出されており、極めて優秀な編集者も多数いらっしゃると承知しているので、奮起*9 に期待したいところです。

 

最後に、アンケートやリプの形でご協力いただいた皆様、誠にありがとうございました!!

 

 

 

*1:はい、そこ、「顧問弁護士の先生に頼めばいいんじゃない?」という答えはNGです。全てを顧問の先生にリサーチを頼むことができず、法務パーソンが自分でやらないといけないことを前提としています!

*2:ただし、『一問一答』が出た後はあまり使われなくなっているのでは

*3:ただ、法学部の学生用の教科書という印象が強い

*4:いっそのこと、「一人の実務家」としてクライアントにどうアドバイスしているか、「踏み込んだ私見」を示します、という方向に振れた方がむしろ特色が出ていいのでは、とさえ思う。

*5:中田契約法が早期に改訂されると、中田シリーズで、「通し」で改正債権法の範囲を概ね網羅できるので、有用性は上がりそうです。

*6: https://www.shojihomu.co.jp/nbl/nbl-backnumbers/1106-nbl

*7:https://www.shojihomu.co.jp/nbl/nbl-backnumbers/1156-nbl

*8:なお、私はいわゆる「新」や「基本」等は、「学習用」コンメンタールとして売っていると理解しており、学生の学習用コンメンタールとしての意義を否定する趣旨ではありません。

*9:具体的には、『我妻・有泉コンメンタール民法 総則・物権・債権』第7版での、真の意味における改正債権法対応